高いモチベーションがパフォーマンスの平均を下げる話

本質的モチベーションがパフォーマンスの平均を下げる話

仕事全体でのパフォーマンスを考えていますか?
➡︎何か楽しすぎる仕事があると他の仕事をしたときにパフォーマンスが低下するようです。

過去の記事で本質的モチベーションがパフォーマンスを高めるということを書きました。しかし、実際の仕事は多様な仕事の組み合わせです。今回はJihae Shinによって発表された論文に基づいてどうすれば仕事全体のパフォーマンスが高められるか紹介します。

高いモチベーションがパフォーマンスの平均を下げる話

仕事全体のモチベーションを保つにはどうすればいいのか?

➡︎ちょうど良いモチベーションでタスクをこなすと他のタスクにもエネルギーを費やせるようです。

長年の間、本質的モチベーションに基づいて行動するとパフォーマンスが上昇するとされてきました。しかし、本質的モチベーションを追求して働いていると興味のないことに対して負担に感じやすくなり、全体のパフォーマンスが低下することが知られています。
その理由として従業員の注意力やエネルギー、時間などのリソースをより興味のあることに費やすからと考えられています。

テレビゲームなどが良い例です。

➡︎モチベーションが高くなりすぎて他のことに見向きもしなくなります。
より強い興味を持つほど思考と行動の負担が多くなり視野が狭まるということも言われています。

✔️コントラストが差を感じやすくする
高い興味や好奇心によって動いている間は
・新しいことや
・挑戦的なこと
を好むようになります。

しかし、別のタスクに移ると普段よりも興味や好奇心を抱かなくなりパフォーマンスが低下します。

こうしたことから、高いレベルの本質的モチベーションによってタスクをこなすとより興味の無いことへの負荷が増えると考えられます。
負荷が大きくなるとミスや事故が生まれます。こうした負荷を減らすためにごまかしたり、嘘をつくようになるようです。

著者は高い本質的モチベーションでタスクをこなした後はより興味の無いことへのパフォーマンスが減ると考えました。

モチベーションが高いと消耗する

デパートで働く105人の販売員や管理者にアンケートを行い、モチベーションの高さとそれぞれのタスクのパフォーマンスを測定しました。

タスクには
・販売
・在庫管理
・商品についての勉強
・商品の配列
・返品や交換への対応
・他の従業員の補助
があります。

☑️それぞれの仕事に対するモチベーションとパフォーマンスを測定しました。
・モチベーションを分析するため、それぞれの仕事に対する興味、楽しさ、面白さ、エンゲージメントを測定しました。2008Grant
・パフォーマンスについては管理者によるアンケート行っています。

☑️今回はモチベーションとして本質的モチベーションを測定していますが、他のモチベーションよってパフォーマンスが高まっている可能性もあるので
・外発的モチベーション
・社会的モチベーション
・性別や年齢、勤務年数
なども測定して標準化しています。

結果

?モチベーションの最大値が高い人
仕事の平均のパフォーマンスが低下し、仕事ごとのパフォーマンスもばらついていました。

?モチベーションの最大値が低い人
仕事の平均のパフォーマンスが低く、仕事ごとのバラツキも少しありました。

✔️このことからモチベーションが高すぎても低すぎてもパフォーマンスの平均が低下することが分かりました。
➡︎ちなみに、中間のモチベーションだと平均のパフォーマンスが最大になります。
そのため、縦軸にパフォーマンスを取り、横軸に本質的モチベーションを取った時には∩のようなグラフが描けます。
また、縦軸にパフォーマンスのバラツキを取るとUのようなグラフになります。

☑️この実験の課題
・このような傾向が一般化できるのか?
・管理者の偏見が入っているかもしれない
・モチベーションの高い仕事を行った後に別のタスクをするとパフォーマンスが低下するのか?
が判断できない、ということで次の実験を行いました。

動画によりモチベーションを高めたグループと下げたグループ、その中間のグループを作り、その後のタスクのパフォーマンスがどうなるのか測定しました。

☑️225人の大学院生を対象にモチベーションが低い、中間、高いグループとなるように動画を見させました。
・低いグループには数学の問題に関する動画
・中間のグループにはライフハック系の動画
・高いグループには自分の好きな動画

を見るように指示しました。

☑️10分後、さらにモチベーションに差をつけるために
・低いグループには特定の動画
・中間のグループには3つ動画のうちの1つ
・高いグループには何でも好きな動画

を5分間見るように指示しました。

☑️その後、それぞれの被験者に面白いタスクと面白く無いタスクをしてもらいます。
・面白いタスクはブロックを組み合わせて新しいものを作るゲームです。
➡︎パフォーマンスを作ったものの数で評価しています。
・面白く無いタスクは電話番号を書き写すタスクです。
➡︎パフォーマンスを書き写した数で評価しています。

感情について難しく感じたかや集中できたかなどをアンケートしてパフォーマンスとの関連を調べました。

結果

?モチベーションを下げたグループと高めたグループ
2つ目のタスクをした時に注意力が散漫になりパフォーマンスが低下していました。
➡︎面白いタスクと面白く無いタスクの両方で見られています。

?中間のモチベーションのグループ
2つ目のタスクをした時にパフォーマンスが高くなっっていました。

✔️この結果から、本質的モチベーションが低すぎても高すぎても次のタスクのパフォーマンスを下げることがわかりました。
➡︎モチベーションの高いタスクをすると消耗して次のタスクのパフォーマンスが低下すると考えられます
そのため、モチベーションが中間のタスク→低いタスク→高いタスクの順で作業すると良いかもと考察されています。

まとめ

✔️今回の研究からモチベーションが高ければ良いということでは無いことが分かりました。
何かに取り組む時には順番を調整しながら取り組むと良いかもしれません。

こうした反応はポジティブの研究でも同じようなことが知られています
過去の研究では強いポジティブな感情を感じると他のことを経験してもそこまでポジティブに感じにくくなるということが報告されています。

モチベーションについても同じようなことが起こっているのかも知れません。

悩み;どのように順番を調整すれば良いの?

➡︎スポーツに例えていきます。

本質的モチベーションが
・低い練習を基礎練習(反復練習や走り込み)
・中間の練習を通常の練習(試合を想定した練習)
・高い練習を練習試合

と考えます。

通常は基礎練習→通常の練習→試合としてしまいがちです。
➡︎しかし、モチベーションの維持を考えた時には通常の練習→基礎練習→試合とした方が良いと考えられます。
仕事でも自分の楽しいとか興味深いなという気持ちを参考に順番を工夫してみてはいかがでしょうか?

関連記事