不誠実な振る舞いをしてしまう理由とその対策

不誠実な振る舞いをしてしまう理由とその対策

嘘をつく、約束を守らないなど不誠実な振る舞いをしてしまうのは何故なのでしょうか?
➡︎自分の道徳心に注目していない時や柔軟にカテゴライズできる時は不誠実な行いをしてしまうようです。

自分がそう思っていなかったとしても相手を傷つけている時があります。今回は2008年にNINA MAZAR によって発表された論文に基づいて不誠実な振る舞いをしてしまう理由について紹介します。

不誠実な振る舞いをしてしまう理由とその対策

なぜ不誠実な振る舞いをするのか?

➡︎内部要因と外部要因の損得を考えた結果とされています

内部要因として個人の中の道徳心があります

人は自分の中に道徳的な人間であり続けたいという自己概念を持っています。
これに反する行為をすると自分が道徳的でない人間なのだと考え直さなければならなくなるため傷つきます。
そのため、自分の道徳心に注目している時には誠実な行動が多くなり、注目していなければ不誠実な行動が多くなります。

外部要因には様々な要因があります

・外部からの報酬
捕まる可能性
罰の程度
など外部からの様々な要因が考えられています。
➡︎今回はカテゴライズに関して調査しています。

✔️カテゴライズすることで不道徳な行為でも感じ方が変わる
人は特定の行動をとるときにその行動をカテゴライズして理性的に判断します。
例えば友達から100円のペンをとるよりもペンを買うための100円をとるほうが罪悪感があります。
なぜなら、ペンをとるのは友人関係と互換性があり、友人だからペンを取ったと言い訳ができるからです。
このようにカテゴライズには柔軟性があるため、自己概念(自分が誠実な人間であるという信念)を傷つけずに不誠実な行動ができます。

?カテゴライズには柔軟性があります。
しかし、殺人や万引きなど明らかに道徳に反する行為があります。
そう言った意味で制限があります。

著者の立てた仮説

仮説1;誠実さへの注目が減少するにつれて不誠実な行動が増える
仮説2;カテゴライズの柔軟性が増えるにつれて不誠実さが増える
仮説3;不誠実な機会が与えられたときに自己概念を傷つけない程度に不誠実な行動をする

自己概念が傷つくと誠実になる

著者は仮説1(誠実さへの注目が減少するにつれて不誠実な行動が増える)を検証するため報酬として0.5ドル受け取るグループと2ドル受け取るグループを作りました。0.5ドルの方が誠実さに注目しにくいと考えられます。また、誠実さが高いグループと通常のグループに分け、数学の問題を解かせ不正をしないか検証しました。
このテストは簡単に不正ができるような仕組みになっています。

誠実さの高いグループには不正をしないと署名させ、通常のグループには読んだ本の内容を書き出させました。


この結果、誠実さが高いグループでは金額によらず不正を行いにくく、通常のグループでは0.5ドルで不正を行う人が多くなっていました。

✔️この結果から、仮説1(誠実さへの注目が減少するにつれて不誠実な行動が増える)が立証されました。
金額が低下こするとで誠実さに注目しにくくなり自己概念が傷つかなくなったと考えられます。

次に仮説2(カテゴライズの柔軟性が増えるにつれて不誠実さが増える)を検証するために同じ数学のテストを使い、一問あたり0.5ドルと交換できるシステムにしました。
お金が問題にカテゴライズされているため不誠実な行動が増えると考えられます。


この結果、一問あたり0.5ドルと交換するほうが誤魔化す人が多くなっていました。

✔️この結果から、仮説2(カテゴライズの柔軟性が増えるにつれて不誠実さが増える)が立証されました。
➡︎カテゴライズが柔軟になったことにより、自己概念を傷つけにくくなったため不正が増えたと考えられます。

次に仮説3(不誠実な機会が与えられたときに自己概念を傷つけない程度に不誠実な行動をする)を検証するために実験を行いました。先ほどの実験と同じことを行わせ不正をしている人の自己概念が傷ついているのか調査しています。

1、上記と同様、一問あたり0.5ドルと交換する条件で正解数を答えさせます。
2、自分の誠実さについて100段階で評価、道徳心について10段階で評価します。
➡︎ここで被験者の自己認識が低下したのか確認しています。
3、次に同じ形式のテストを行ったときに何問正解できるか、どのぐらい自信があるか100段階で評価してもらいました。このときには1回目の正解数が与えられています。さらに、予想と合わなければ報酬が下がる仕組みになっていることが伝えられます。
4、もう一度テストを受ける。
➡︎不正を認識しているかの評価(不正をしている認識がなければ予想と合致しない。)


この結果、正解を多く見積もり不正をしている人は自覚もなく自己認識も低下していませんでした。

✔️この結果から、仮説3(不誠実な機会が与えられたときに自己概念を傷つけない程度に不誠実な行動をする)が立証されました。

まとめ

✔️この研究から、自分の道徳心に注目していない時や柔軟にカテゴライズできる時は自己認識を傷つけず不誠実な行いをしてしまうことがわかりました。
不誠実なことをした自覚がないため客観的に見た人とはギャップが出来てしまいます。
人が不誠実なことをしやすいことを認識し、署名をさせたり「嘘をついてはいけない」などの文章を読ませると良いと考察されています。

犯罪の分野への応用

➡︎道徳心を無視していたり、自分を正当化していると自己認識が傷つかなくなり犯罪につながるようです。

道徳心の無視や自分を正当化するなどはサイコパスの特徴としても知られています。サイコパスはこうした考え方で自分を傷つかなくしているのでしょうね。

誠実さとカテゴライズ

➡︎自分を誠実さに注目するとカテゴライズの柔軟性が減るという報告もあります。

誠実さとサイコパスが負の相関があり、思考の柔軟性とサイコパスが正の相関があるという事が知られています。こうした点からもサイコパスが自分を傷つきにくくしている事が分かります。

電子決済になり不誠実な行為が増えるかも

➡︎今回の実験では正解数とお金を交換する手順を挟むことで不誠実な行為が増えました
電子決済により別のカテゴリーになり詐欺や押し売りが増えるかもです

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