温暖化防止のための政策

温暖化防止のための政策

以前の記事で温暖化がどの様な被害をもたらすのか、温暖化対策にどの様な方法があるのか見てきました。今回は温暖化に対してどの様な政策が取られているのか見ていきます。

温暖化防止のための政策

以前の記事で温暖化防止のために地球の平均気温の上昇を2℃以内に抑えることがコペンハーゲンで決まったことを書きました。

2℃以内というのは温暖化による損害と二酸化炭素排出削減にかかるコストを加味した時のコストパフォーマンスがよくなる条件でした。

この条件を支える科学的な根拠が3つあります。

  1. 50万年間で地球が温暖だった時期の平均気温が今日よりも2℃ほど高く、それ以上になるのは危険かもしれない。
  2. 2℃以上上昇すると生態系が崩れてしまう可能性が高い
  3. 2℃以上の上昇は臨界点を超えてしまう可能性が高い

過去50万年間の平均気温

過去何十万年の温度を調べる方法には南極の氷床コアを調べる方法がある様です。氷の中に閉じ込められた空気の成分(二酸化炭素やメタンガスなど)を調べることで当時の気温が予想します。

この調査によると過去50万年の間に平均気温が今より2℃以上上がったことがなく、それ以上上がると危険なことが起こるのではないかと考えられています。

生態系への影響

生態系への影響についてはIPCCの第4次評価報告書下記の様に書かれています。

  • 1℃の上昇…水不足の深刻化、サンゴの白化、沿岸洪水の増加、両生類の絶滅の増加
  • 2℃の上昇…20〜30%の生物種で絶滅リスクの増加
  • 3℃の上昇…穀物生産性の低下、氷床の融解による数メートルの海面上昇、医療制度への負担の増加
  • 5℃の上昇…大規模な生物種の絶滅、穀物の生産性の著しい低下、沿岸湿地の30%の消失、海岸線の変化、海洋循環の大規模な変化

上記からもわかる様に2℃と3℃で大きな変化があります。生態系の保存には莫大なコストがかかるので2℃以内に抑えなければなりません。

臨界点を超える

上記に書いた様に3℃の上昇は氷床の融解や生態系の変化が予想されています。こうした臨界点を一度超えてしまうとなかなか元に戻せません。

この様な予測は予測でしかありませんが、真摯に受け止めなければなりません。

炭素価格

こうした危険を避けるため炭素価格を取り入れることが推奨されています。

炭素価格とは二酸化炭素の排出に価格をつけるというものです。大きく分けて次の2つがあります。

  • 炭素税
  • キャップ・アンド・トレード

平均気温の上昇を2℃以内に抑えるという目標のためにはインセンティブが必要です。そのために、経済の力を使うというのがこの考え方です。

炭素税

炭素税とは二酸化炭素の排出量に応じて税金をかける方法です。

例えば、電力会社や石油会社に炭素価格を払う様に指示すれば、電力や石油の価格が上昇し消費者が負担する様になります。すると、消費者は火力発電よりも風力やバイオマス発電を行なっている電力会社から電力を買う様になったり、車もハイブリットカーやEV車を買う様になります。

これにより二酸化炭素を排出する産業の需要を減らし、よりクリーンなエネルギー産業の需要が増えます。

ヨーロッパの国々では積極的に取り入れられている様ですが、日本ではほとんど取り入れられていません。その結果、二酸化炭素の排出削減も進んでいません。

キャップ・アンド・トレード

炭素税とは別にもう一つの方法としてキャップ・アンド・トレードが考えられています。

キャップ・アンド・トレードとは企業に二酸化炭素排出量の許可証を持つことを義務付け、それを企業間で売買できるシステムのことです。

炭素税が税金という馴染みのあるシステムなのに対し、キャップ・アンド・トレードは馴染みがなく、急激な価格の変動が予想されリスクが高いとされています。

理由は排出枠の需要と供給が排出枠価格の変化に感応的に動かないためだとされています。

それぞれのメリット、デメリット

  • 炭素税…メリット=炭素価格が安定する、デメリット=排出量が不明確
  • キャップ・アンド・トレード…メリット=炭素価格が安定しない、デメリット=排出量が明確

この様にそれぞれにメリット、デメリットがあるためハイブリットさせた強固な妥協策が検討されています。

ヨーロッパでは2008年に炭素価格が75%下落した経験があるため、排出権を5割り増しで販売できる制度を導入することで価格の変動を抑制している様です。

まとめ

二酸化炭素削減のためこの様な政策が考えられているのですが、それをやればいいじゃん、とはなりません。

二酸化炭素を排出してきた国の責任やどうやって経済発展を継続させていくのか、様々な利害関係がぶつかり全世界での合意が取れません。

合意しない国は他の国の取り組みにタダ乗りできることになり不満が出ますし、影響が出る頃には各国の代表が入れ替わっているため積極的ではありません。

科学的なデータが明確でないと理由づけて取り組まなければ、政治的にも国内の不満を受けなくて済みます。

本当にややこしい問題です。

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