他人のためと意識すると学力が伸びる話

他人のために勉強するとモチベーションが上がる話

勉強へのやる気は維持できていますか?
➡︎自分のためではなく、誰かのために勉強すると学力が伸びるようです。

社会が急速に変わっていく中で勉強をして自分の能力を高めないと働き口がなくなってしまうかもしれません。そうとは分かっていても、なかなかモチベーションが続きません。今回は他人のためと思って勉強するとモチベーションが上がるという論文を紹介します。

他人のために勉強するとモチベーションが上がる話

この記事は2014年にDavid S. Yeagerによって発表された論文に基づいています。

なぜ勉強が大事なのか?

➡︎科学分野の仕事は増加しているからです
サイエンスやテクノロジー、エンジニアリング、数学は需要があり、こうした仕事は数年後には20%成長していると考えられています。

これらの能力を高めると仕事に困らなくなると考えられますが、勉強は退屈で長く続けるのが難しいという問題があります。
↪︎退屈なことを取り組むためにはやり抜く力や自己制御能力などのスキルが必要とされています。実際にこの能力が高い人は専門的な能力を高いことが知られています。

どうしたらモチベーションが維持できるのか?

➡︎目標設定が重要です

やり抜く力や自己制御能力は目標を達成する意志からきていることが知られています。
➡︎今回の研究では
・自分のため(本質的モチベーションと外発的モチベーション)
・他人のため(社会的モチベーション)
という目標設定でどんな違いが出るか調査しています。

☑️本質的モチベーションとは
勉強そのものに対する興味からくるモチベーションです

☑️外発的モチベーションとは
お金がないと生活できないとか、勉強しないとリストラされるというネガティブな感情からくるモチベーションです。

☑️社会的モチベーションとは
世の中のためや家族のためという利他的な行動をしたいというモチベーションです。

例)橋を建てて便利な社会にしたいから物理学を学ぶ→社会的モチベーション
  自分の興味やキャリアのため→本質的モチベーション
  お金が必要だから→外発的モチベーション

目標設定によりモチベーションが高まる

➡︎過去の研究では貧しい子供のために寄付を集めるときの方が成績が良かったり、相手に風邪をうつさないためにといわれた時の方が手洗いを行うようになる、などの報告があります。

理由としてストレスに耐えれるようになったり、モチベーションの低下を防ぐ効果が確認されています。

勉強でも同じ効果が得られるのか?

➡︎得られます。

風邪をうつさないために手洗いするなど自分の行動と結果が明確に結びついているのに対し、勉強して世の中に貢献できるかは曖昧という問題があります。

しかし、今回の研究で目標設定により勉強へのモチベーションが高まり、成績が向上することが確認されました。

本質的モチベーションだけでは不十分

低所得層の学生は成績が良く望んだ大学に入ったにもかかわらず1学期で中退する人が多いようです。そこで、低所得層の学生に注目して調査しています。

著者は他人のために勉強する意識のある人は粘り強く勉強すると仮定しました。

この仮定を検証するために学生たちにアンケートを取り、粘り強さや自己制御能力を測定するテストを行いました。

  • 学業に社会的意味を見出しているか→Behavior Identification Form (BIF)を使用(Action-identification Theoryに則っています)。
    ➡︎勉強に対する価値観や目標をどう捉えているかを測定します。
  • やりきる力を測定→GRITを使用。
    ➡︎他の人が休んでも自分は続ける、一度始めたら最後までやる、などを5段階で評価します。
  • 自己制御能力のアンケート
    ➡︎気をそらす刺激があっても集中する、サボらず仕事をする、などを評価します。

?テスト
フェーズ1…パソコン上で数学の問題を解かせる
フェーズ2…解き終わるごとに次の問題に進むか娯楽の動画を見るか選ばせる
フェーズ1とフェーズ2を繰り返す
➡︎GRITと自己制御能力が高いと問題の回答数や正答数が多い仕組み

結果

?学業に社会的意味を見出している人
・退屈な問題にも意味を見出し、自己制御能力ややり抜く力も高かった。
・本質的モチベーションとは相関がみられず、外発的モチベーションが高いと自己制御能力が低下していた。

✔️この結果から社会的モチベーションの高い人は退屈な勉強も頑張ることが分かりました。

☑️この実験の課題
この結果を生活に活かしていくためには個人が元から持っている社会的モチベーションを高めないと成績が改善されないという課題があります。
➡︎そこで、社会的モチベーションを引き出し成績を改善することができるか?検証して見ました。

社会的モチベーションを引き出したグループと何も介入しないグループで比較して成績が上がるか検証しました。

?社会的モチベーションを引き出す方法
・どうやったらこの世界がよりよくなるのか?
・より平等で飢えや貧困、暴力や病気をなくしたい、と思っている人がいます。
・あなたが思う世界をより良くする方法は何ですか?
などの文章を読ませた。
➡︎答えを与えるのではなく、自分の答えを見つけることが重要です。

成績はSTEM Grade point average(GPA)という数学や科学の点数を測定する指標を使っています。

結果

?社会的モチベーションを引き出した人
成績が改善されました。特にもともと成績が悪かった人で大きな効果が見られました。

☑️この実験の課題
・本質的モチベーションとの比較が出来ていない。
・粘り強さや自己制御能力が高まったか分からない。
➡︎社会的モチベーションを引き出したグループと本質的モチベーションを引き出したグループで粘り強さや自己制御能力を測定するテストを行いました。

本質的モチベーションを引き出す方法として
・ストレスなく楽しんで自分の興味のあることをしている人がいます
・自分のために世界がどの様になったら良いと思いますか?
などの文章を読ませました。

結果

?社会的モチベーションを引き出した人
誘惑に負けず多くの問題を解いた。

?本質的モチベーションを引き出した人
誘惑に負け正答数が低下した。

✔️この結果から、社会的モチベーションにより退屈な問題にも勤勉に取り組める様になり成績が向上したと考えられます。

まとめ

✔️今回の研究から他人のためというモチベーションが高いと退屈なことにも勤勉に取り組める様になることが分かりました。
↪︎家族のためという動機付けもパフォーマンスを向上させることが知られています。

生活への応用

勉強にやる気が出ません
  • 本質的モチベーションと社会的モチベーションを引き出しましょう。
  • 本質的モチベーションが出ない時は自分のレベルにあった参考書を使うなど進捗が得られやすいように工夫しましょう。
  • 社会的モチベーションが出ないときは家族のためと考えてみましょう。

?モチベーションを引き出す時は押し付けるのではなく自分の頭で考えさせることが大切です。
➡︎今回の研究が参考になります。

✔️状況に応じてモチベーションを工夫しましょう
・社会人は勉強が仕事に関連してるので社会的モチベーションは高めやすいです。
・学生の場合は家族の支えを感じると社会的モチベーションが高まります。

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