睡眠不足でどんな影響が出るのか?理想の睡眠時間について紹介します。

睡眠不足でどんな影響が出るのか?理想の睡眠時間について紹介します。
この記事の対象者
  • 適切な睡眠時間が知りたい
  • 活力を持って日々の生活を過ごしたい
  • 自分の睡眠時間が適切なのか確認したい

日本人は世界で最も睡眠時間が少ないということで有名です。しっかりと眠ることで認知能力が向上し仕事の生産性が高まります。逆に、適切な睡眠時間が確保できていないと様々な悪影響が出ること分かっています。今回は科学的な知見をもとに睡眠不足によってどのような悪影響が出るのか?また、適切な睡眠時間が何時間なのかを紹介します。

この記事を読むことで理想の睡眠時間がわかります。

睡眠不足でどんな影響が出るのか?理想の睡眠時間について紹介します。

睡眠不足による悪影響には様々なものが知られています。ざっくりと下記にまとめましたので参考にしてください。

睡眠不足による悪影響
  • 筋肉が発達しない:睡眠不足になると筋肉を修復するIGF1やテストステロンが減少し、筋肉を消費させるグルココルチコイドやミオスタチンが増加することが知られています(R)。睡眠不足の状態だと筋トレをしても体が筋肉を修復する状態にならないので筋肉がつきにくくなります。
  • 太りやすくなる:睡眠不足によりホルモンのバランスが崩れることで太りやすくなることも知られています(R)。食べても満腹になりにくくなり、摂取カロリーが20%も増えてしまうようです。また、血糖値のコントロールができないので糖尿病のリスクも増加します。糖尿病になるとガンや心臓病などの様々な病気の原因になるので気をつけましょう。
  • 風邪をひきやすくなる:睡眠時間が1日7時間を下回ると風邪にかかるリスクが3倍も高くなることが知られています(R)。ホルモンバランスが鈴れるのでこうした影響が出ても不思議ではないですね。
  • がん・心臓病・脳卒中リスクが増加する:睡眠不足の人がこうした病気になりやすいという統計的なデータがあります。この他にも睡眠不足は様々な病気との関連が言われているので注意しましょう。
  • ネガティブな感情が増加する:寝不足になるとイライラして注意が散漫になる、という経験をしたことがある人は多いと思います。実際に2005年に発表された論文では些細なことにもイライラしてしまうようになった、という結果が得られています(R)。また、鬱や不安が増加し幸福感が減少することも知られています。
  • 記憶力・学習力の低下:睡眠には記憶を整理するという役割があります。2000年に行われた実験によるとトレーニングをした後によく眠ることでテストの点数が格段に上がったとしています(R)。また、睡眠不足の状態だと認知能力も低下するので些細なミスが多くなることも知られています。事故に巻き込まれるのも寝不足が1つの原因となっています。

身体的にも精神的にも様々な悪影響が出ることがわかります。理想の自分になるために頑張っていてもなぜかうまくいかない、という人は睡眠時間が足りてないからかもしれません。では、こうした悪影響を出さないための適切な睡眠時間とはどのぐらいなのでしょうか?

理想の睡眠時間とは?

睡眠時間は6時間あれば十分、という話を聞いたことはありませんか?私もこの話を信じて睡眠時間6時間で生活していました。しかし、どうしても日中に眠たくなるので関係のある論文を調べてみました。

2004年に行われた研究では6時間睡眠で短期間の問題はないのですが、徐々に認知機能が低下するという結果が得られています(R)。被験者48人を睡眠時間が「4時間」「6時間」「8時間」のグループに分け、2週間にわたり認知機能を測定するテストを行いました。その結果、最も高いパフォーマンスを示したのは「8時間」のグループで、これに対して「4時間」のグループは、連日のテストで低い成績を出し続けました。一方、「6時間」のグループは最初のうちは問題なかったのですが、10日目を過ぎたあたりからパフォーマンスが低下し、実験の最後の数日は2日間全く眠らなかった人と同じくらいの認識力になっていました。

さらに面白いことに、睡眠時間が「6時間」のグループは認知機能が低下していても、睡眠が足りていないという自覚がありませんでした。全く眠らなかった人は眠気を感じていたのですが、「6時間」のグループの人は眠気を感じにくいまま認知機能が低下していました。

仕事で何かミスをしてしまう、作業が遅くて残業してしまう、という人は睡眠時間が足りてないせいかもしれませんね。

また、シカゴ大学で行われた別の研究では、人々が自分の睡眠状態を過大評価しているという調査結果が示されています(R)。多くの人は自分の睡眠時間を0.8時間分多くみているようで、「7時間睡眠」と思っている人は本当は6時間強しか眠れていない、という状態になっています。

寝すぎてもダメ

睡眠時間が6時間では不十分ということを紹介しましたが、寝すぎるのもよくないという研究もあります(R)。「睡眠の時間と質」と心血管疾患の予後と死亡率について、これまでに行われた74の研究を再調査した結果、1日に平均10時間以上の睡眠を取っている人は、平均睡眠が7時間の人に比べて下記のようなリスクがあることがわかりました。

長時間睡眠の悪影響
  • 早期の死亡率が30%高い
  • 脳卒中による死亡リスクが56%高い
  • 心血管疾患による死亡リスクが49%高い
  • 睡眠の質が悪いと冠動脈疾患になる割合が44%高くなる

この再調査の対象となった人は合計で300万人以上になり、かなりの規模の調査になっています。この結果から10時間以上の睡眠は体への害が多い可能性が高いことがわかります。

ただし、睡眠時間が体に影響したのか、体の状態が睡眠時間に影響したのかははっきりしていません。例えば、赤ちゃんが多くの睡眠時間を必要とするように、すでに心臓病や脳卒中のリスクを抱えている人が長い睡眠時間が必要なのかもしれません。どっちにせよ、10時間以上の睡眠を必要としている人は体に異常が出ていると思って良いでしょう。

何時間寝るのがベスト?

睡眠時間に関する論文では8時間以下の睡眠を推奨しています。ただ、年齢に応じても推奨される睡眠時間が違うので、年齢に応じた睡眠時間を知っておくのが重要です。2015年に国立睡眠財団から出たレポートでは下記のようなデータを出しています(R)。

年齢別のベストな睡眠時間
  • 0~3か月:14~17時間
  • 4~11か月:12~15時間
  • 1~2歳:11~14時間
  • 3~5歳:10~13時間
  • 6~13歳:9~11時間
  • 14~17歳:8~10時間
  • 18~25歳:7~9時間
  • 26~64歳:7~9時間
  • 65歳以上:7~8時間

このデータからも18歳以上の人は8時間程度の睡眠時間を確保することをお勧めします。睡眠の悪影響が出ず、認知力が最大限発揮できる時間ですね。ただし、日中に激しい運動をしている、仕事で集中している時間が長い、など生活習慣いよっても修正が必要です。そのため、ベストな睡眠がとれているか下記のチェック項目を使って時間を調整してください。

ベストな睡眠のチェックポイント
  • 目覚ましをかけないでも同じような時間に起きられる
  • スッキリと朝起きられる
  • 寝る時間と起きる時間が固定されている
  • 適切な睡眠時間が確保できている

全てに当てはまっていたらベストな睡眠がとれています。ただ、十分な睡眠時間を確保できていても、スッキリと朝起きられない、という人もいると思います。そうした人のために、睡眠の質を高める方法を紹介していきます。

睡眠の質を高める方法

毎日を充実させるためには適切な睡眠時間に加え、睡眠の質も重要になります。睡眠の質を高めるためには下記の5つに気をつけましょう。

睡眠の質を高める方法
  • 眠るまでのパターンを作る
  • お風呂は寝る2時間前に入る
  • 寝る直前に夕食を食べない
  • 寝室の温度を調節しておく
  • 起床するときには暖かくする

眠るまでのパターンを作る

読書をする、歯を磨くなど眠りにつくまでの行動をパターン化しましょう。また、同じ時間に眠りにつくことで体が時間を覚え、寝付きやすくなります。最初はうまくいかなくても毎日行っていれば自然と決まった時間に眠くなります。

お風呂は寝る2時間前に入る

体温と睡眠には深い関係があります。人間の体は睡眠中に体温を低く保つようにできており、お風呂で体温が上がった状態だと寝付きにくくなります。2時間前にお風呂に入っておくと、暖まった体が冷えていく流れで眠りにつくことができるので寝付きやすくなります。

寝る直前に夕食を食べない

寝る直前に夕食を食べると食べ物を消化するのにエネルギーを使うので寝つきか悪くなります。体が休むことができるように寝る直前には食べ物を食べないようにしましょう。

寝室の温度を調整しておく

寝室の温度も睡眠の質に影響します。暑かったり寒かったりすると、寝つきが悪くなったり夜中に起きてしまう原因になります。適温は18度から20度と言われているので、通常よりも少し低めの温度設定にしましょう。

起床するときには暖かくする

睡眠中に体温を下げているので、起きるときには体温を上げてやりましょう。体温を上げることで、スッキリと起きられ寝すぎてしまうのを予防してくれます。日中に活動的になることで夜の睡眠の質も向上します。

睡眠に対する疑問

上記では睡眠不足による影響や理想の睡眠時間について紹介してきました。毎日行なっている睡眠ですが、とても奥が深いことがわかると思います。最後に、私がこうした情報を調べる中で興味深いと思ったものについて紹介しておきます。

なぜ寝ないといけないのか?

睡眠には記憶力の向上やホルモンバランスの調整、といった役割があるのですが、なぜ睡眠によってこうした効果が得られるのかは分かっていませんでした。この答えとして注目されているのがGlymphaticシステムです(R)。

Glymphaticシステムとは、脳細胞内に脳脊髄液(CFS)が入り込み老廃物を洗い流すという機能のことを言います。ロチェスター医療大学のメイケン・ネダーガード博士は、深い眠りについているときにこのシステムが最も活発に働くことを発見しました。

近年までは、生きたままCFSの流入を観察する方法が無かったのですが、2光励起顕微鏡が登場して生きたままCFSの観察ができるようになりました。この顕微鏡を使ってハツカネズミの脳血流量と大脳のCSFを観察したところ、睡眠中にGlymphaticシステムが起きている時の10倍も活性化していることがわかりました。また、脳細胞は睡眠時に60%収縮することでより多くのCSFが流入できるよう大きな空間を作り出していることも発見されています。

Glymphaticシステムを活性化して老廃物を除去しなければならないので睡眠が必要、ということですね。ちなみに、このシステムがうまく機能していないとアルツハイマーやパーキンソン病になるのではないか、ということも言われているようです。

ショートスリーパーは何が違うのか?

毎日たった3~4時間の睡眠を取るだけで普通の人と同じように問題なく生活できる「ショートスリーパー」と呼ばれる人々がいます。人間は「人生の3分の1を寝て過ごしている」と言われていますが、なぜショートスリーパーの人々は睡眠時間が極端に短くても健康的なのでしょうか?

2009年にカリフォルニア大学で行われた研究では、ショートスリーパーと呼ばれる人の「DEC2」という遺伝子が突然変異を起こしていることを発見しています(R)。DEC2という遺伝子は体内時計や細胞の分化を調整する遺伝子として知られています。また、前述のショートスリーパーの女性の家族のうち、普通レベルの睡眠時間を必要とする人たちはDEC2遺伝子に変異が見られなかったそうです。

カリフォルニア大学で睡眠の研究を行っているYing-Hui Fu教授は、ショートスリーパーの人たちはDEC2遺伝子の突然変異によって脳内の情報整理を普通の人よりも短い時間で済ませることができるため、睡眠時間が短くても問題ないのではないか、と述べています。上記でも紹介したようなGlymphaticシステムに関係しているのかもしれませんね。

睡眠と性格の関係

睡眠時間と性格の関係も明らかになってきています。ウエストバージニア大学で行われた研究では性格によって睡眠時間の平均から離れて行きやすく、死亡のリスクが10%高まる、という結果が出ています(R)。性格の診断にはビッグ5という指標を使い、下記のような結果が得られています。

睡眠と性格の関係

  • 誠実さが低いと睡眠時間が少なくなる
  • 同意性が高いと睡眠時間が短くなり、日中も疲れやすい
  • 神経症的性格が高いと睡眠時間が平均から離れやすく、日中も疲れやすい
  • 外交性が高いと日中に疲れやすい

こうした性格による睡眠時間の差が死亡リスクを上げていると考えられています。ビッグファイブを試してみたい、という人はこちら。ビッグファイブについて詳しく知りたい、という人は下記の記事を参考にしてください。

寝溜めは有効なのか?

平日は睡眠時間が確保できず週末に寝るようにしている、という人も多いと思います。こうした「寝溜め」は有効なのでしょうか?

結論としては死亡リスクを抑えるためには寝溜めが有効という結果になっています(R)。ストックホルム大学で行われた研究では睡眠時間を平日と休日に分けて被験者を
・平日も休日も短時間睡眠のグループ
・平日は短時間睡眠で、休日は長時間睡眠のグループ
・平日も休日も中時間睡眠のグループ
・平日も休日も長時間睡眠のグループ
に分けて、死亡リスクとの関連を分析しました。

その結果、1週間続けて睡眠時間が5時間未満という「平日も休日も短時間睡眠のグループ」は、1週間続けて7時間眠る「平日も休日も中時間睡眠のグループ」に比べて、死亡リスクが52%も高いことが判明しました。しかし、平日は少ない睡眠時間でも、休日に「寝だめ」をする「平日は短時間睡眠で、休日は長時間睡眠のグループ」は、「平日も休日も中時間睡眠のグループ」と同程度になっていました。
ちなみに、毎日9時間以上眠る「平日も休日も長時間睡眠のグループ」についても、短時間睡眠を続けるグループと同様に死亡リスクが高かったという結果になっています。

ただし、寝溜めをすれば問題ないというわけではありません。寝溜めをしたとしても体に何らかのダメージが蓄積されている可能性があります。また、認知能力は「寝溜め」をしても回復しない、という研究もあります(R)。寝溜めにより眠気は治るのですが、認知能力は低下したままという状態になります。出来るだけ普段から7〜9時間の睡眠時間を確保するようにしましょう。

まとめ

今回は睡眠不足による影響と理想の睡眠時間について紹介してきました。

よく言われる「6時間睡眠」というのは眠気を感じないだけで、実際には認知機能が低下しています。また、自分で思っているよりも睡眠時間は短くなるので「8時間睡眠」を基本に毎日のルーティーンを作ると良いでしょう。

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