【分かりやすく解説】知っておきたい感染症の予防方法。他人を守るためには自分から。

【分かりやすく解説】知っておきたい感染症の予防方法。他人を守るためには自分から。
この記事の対象者
  • 感染症の予防方法が知りたい
  • なぜウイルスに感染しても重症化しない人がいるの?
  • コロナウイルスについて知りたい

感染症対策をしたいけどまとまった記事がなくて困っていませんか?コロナウイルスが蔓延していて改めて感染症の対策方法を知りたいという人も多いと思います。今回はWHOや厚生労働省のホームページを参考に感染症の予防方法についてまとめました。

この記事を読むことで感染症の対策方法が分かります。

【分かりやすく解説】知っておきたい感染症の予防方法。他人を守るためには自分から。

ウイルスへの感染を予防するために、まずはウイルスがどのように増殖して人に感染するのか紹介していきます。こうしたウイルスの特徴を知ることで感染しないように気をつけるべきことが分かってきます。

ウイルスの特徴

ウイルスは厳密にいうと生き物ではありません。なぜなら、自分で増殖することができないからです。では、どうやって増殖するのかというと、他の生き物の増殖システムを利用します。他の生き物は細胞が分裂して増殖することが出来ますよね。ウイルスはこのシステムを乗っ取って増殖します。もちろん、人だけではなく、豚や鳥などにも感染します。

私たちは自分の体を構成するためのゲノムと言われる情報を持っています。足の細胞も心臓の細胞も同じゲノムを持っているのですが、使っている情報が異なるためそれぞれの役割を果たせる細胞になります。
この役割を果たすためにゲノムを構成しているDNAからRNAを作り、RNAからタンパク質を作ります。これをセントラルドグマと呼びます。

ウイルスにはDNAを持っているものとRNAを持っているものがありますが、どちらも宿主のセントラルドグマを乗っ取ります。これにより自分のDNAやRNAを作りその入れ物になるタンパクまでも作り出します。こうして自分を増殖させた後、細胞を殺して外に出ていきます。

冬にウイルスにかかりやすくなる理由

こうしたウイルスの特徴を知ると冬にウイルスが流行する理由も分かります。

ウイルスは他の生き物に感染することで自分を増やすので、生き物がウイルスに感染しやすくなる冬に流行しやすくなります。冬は太陽が出ている時間が短くなるので、日光によって作られるビタミンDが不足しがちになり、ウイルスを殺すカテリジンやバリアの機能をするb-ディフェンシンが作られにくくなります。

また、空気が乾燥するのでウイルスが空気中を漂いやすくなり、生き物との接触頻度が増えます。さらに、冬場は寒いので換気の頻度が減り空気中のウイルスの量が増えやすくなります。恐ろしいことにウイルスは生き物の細胞の中で眠ることができ、こうした環境になった途端、起きて活動を始めるということも知られています。

ウイルスの生存能力は低い

上記でも紹介したようにウイルスは生物ではありません。そのため、生き物の外にいるとすぐに死んでしまいます。

一般的なウイルスは温度や湿度が高い方が死にやすく、撥水性のスチールやプラスチックなどの上では長く生き延び易いとされています。インフルエンザウイルスは空気中でも生き延びる時間が長く、条件が整えば生体外でも24時間生き延びるとされています。

主な感染経路とは?

ウイルスは生き物ではないので生き物の外にいるとすぐに死んでしまうということを紹介しました。そのため、感染しなければ次第にウイルスは世の中からなくなっていきます。では、感染しないためにどうすればいいのか紹介していきます。

ウイルスの感染経路
  • 飛沫感染…感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば など)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを吸い込んで感染することを言います。主な感染場所は劇場、満員電車などの人が多く集まる場所です。
  • 接触感染…感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスが付きます。他の人がウイルスのついたものに触れると手にウイルスが付着し、その手で口や鼻を触って粘膜から感染します。
    主な感染場所は電車やバスのつり革、ドアノブ、スイッチなどです。
  • 空気感染…飛沫が空気中を飛行しているときに水分が蒸発すると、飛沫核という微小な粒子となり空気中を長時間浮遊します。そこにウイルスが付着すると、ウイルスも飛沫核に乗って長時間空気中を浮遊し人に感染します。ちなみに、空気感染できる感染症は麻疹、水痘、結核の3つしかありません。コロナウイルスについては空気感染の可能性が疑われている状態です。

飛沫感染しないためには咳や会話の時に飛沫が飛ぶ2メートル以上離れれば安全と考える人もいると思います。しかし、くしゃみや咳などによりエアロゾルが形成されそれを吸い込んで感染するという経路があります。この場合は2メートル以上離れていても感染する可能性があります。エアロゾルのことを考えると飛沫感染と空気感染の境目が曖昧になるので注意が必要ですね。

ちなみに、エアロゾルとは気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子のことを言います。分野によって言い方が変わりますが霧や粉じん、スモッグなどがエアロゾルの仲間という理解で良いでしょう。

効果的な予防方法

上記のようなウイルスの特徴や感染経路を前提として予防方法を紹介します。
予防方法には
・感染経路に応じた対策
・自己免疫を高める対策
の2つがあります。
まずは、感染経路に応じた対策から紹介していきます。

感染経路に応じた対策

厚生労働省のホームページでは飛沫感染、接触感染、空気感染に対して有効とされている予防方法が公開されています。

飛沫感染からの予防

マスクを着用するようにしましょう。マスクがない場合に手で抑えると接触感染を引き起こす原因となります。そのため、ティッシュやハンカチ、袖、肘の内側などを使って、口や鼻を抑えるようにしましょう。

特に電車や職場、学校など人が集まるところで行うことが重要です。人にうつさないためにもこうしたエチケットを守りましょう。もちろん、公共交通機関や人混みの多い場所を避けるなども有効です。

ちなみに、予防用にマスクを着用することは屋内や乗り物など換気が不十分な場所では一つの感染予防策と考えられますが、屋外などでは混み合っていない限りマスクを着用することによる効果はあまりないそうです。

接触感染からの予防

石鹸や消毒用アルコールで手洗いを行いましょう。手洗いのポイントとしてはしっかり泡立てて30秒以上洗うことです。石鹸をつけたとしても30秒以内に流してしまっている人が多いようです。また、2回洗うというのも効果があるようです。

手洗いが不十分になりやすい場所として指の間、手首、爪の間が挙げられています。漠然と手を洗うのではなく意識的に洗うようにしましょう。

空気感染からの予防

温度や湿度、換気によって感染症を予防できます。室内の温度20度以上、湿度を50~60%に保つとウイルスは感染しにくくなるそうです。
また、換気は1~2時間に1回行うとよいとされています。空気が汚れていると粘膜が傷つき感染するリスクが高まるようです。

自己免疫を高める対策

自己免疫を高く維持する方法として食事、運動、睡眠が重要とされています。実際に食事、運動、睡眠を改善することでウイルスにかからなくなった、という結果はありませんが免疫力に関連する指標が上昇することがわかっています。

食事による改善

免疫力を高める食材として下記のものが知られています。

免疫力を改善する食材

  • ネギ…ネギの青い部分に含まれる粘液にはウイルスの感染を予防してくれる効果があるとされています。過去にSARSが流行したときに中国のネギの里といわれている山東省章丘では感染者が出なかったというデータも出ています。この理由としてネギの中に含まれるアリシンという成分が血管を拡張させ血流をアップさせたためだと考えられています。この効果を得るためには生で食べないといけないらしいので和え物にするのがいいかもですね。
  • キノコ類、内臓ごと食べられる魚…これらの食材はビタミンDが豊富なことで知られています。上記で示したように日照時間が短くなるとビタミンDが作られにくくなるため食材から摂取するようにしましょう。復習になりますが、ビタミンDはウイルスを殺すカテリジンやバリアの機能をするb-ディフェンシンの産生に使われます。また、粘膜の結合状態を改善し感染しにくくしてくれることも知られています。
  • イチゴ、みかん、イモ類…これらの食材はビタミンCが豊富なことが知られています(R)。ビタミンCはウイルスへの攻撃力を高めてくれることが知られています。ビタミンCを作れなくしたマウスはウイルスに感染しても抵抗するためのサイトカインを作れませんでしたが、そのマウスにビタミンCを与えると抵抗するためのサイトカインが作られるようになり症状が改善したというデータがあります。
  • 緑黄色野菜、ウナギ、卵…これらの食材はビタミンAが豊富なことが知られています(R)。ビタミンAは鼻やのどの粘膜を保護する働きがあります。特に肺のメンテナンスや修復に重要ということも分かっており、ビタミンAがあることでインフルエンザに感染しにくくなるようです。
  • 生姜…ショウガの中に含まれるジンゲロールはウイルスや細菌を殺すと言われています。また、解熱作用や抗炎症作用、血行を促進するなどの効果も知られています。
  • 紅茶…三井農林株式会社の出したデータによると紅茶によってウイルスの99.96%を無力化できたとしています。また、紅茶を毎日飲むことで発病しない人の割合が増えていることもわかっています。そのため、紅茶を飲むことでウイルスの予防ができると考えられます。

こうした免疫力を改善する食材はいくつかありますが、一番重要なのはバランスです。今回紹介した食材ばかり食べるのではなく、いろんな食材をバランスよく食べることが重要です。普段の生活の中で少しだけ意識するぐらいで良いでしょう。

運動による改善

運動が感染症の予防に重要ということは聞いたことがあると思います。NK細胞やT細胞、好中球といった免疫細胞を活性化し、ウイルスに感染した時にすぐに排除できるようになります。

しかし、運動すればいいといって運動の強度を上げすぎると逆効果になります。免疫細胞の量が低下し、抗体が作られる量も減少します。さらに、炎症性のサイトカインが多く作られるようになるので体が傷つく原因にもなります。実際にマラソンやトライアスロンを行なった人の50%〜70%の人は、2週間のうちにくしゃみや倦怠感、鼻水などの風邪のような症状を示し、風邪になるリスクが2〜6倍になっていることが分かっています。

全く運動しなくても、運動をしすぎてもよくない、ということなので適度な運動が求められます。適度な運動がどのぐらいかというと、下記のような条件になっています。

適度な運動とは?

最大酸素摂取量の50%〜60%で1日20分〜60分の運動を週に3回以上の頻度で長期的に持続する。

最大酸素摂取量とは、これ激しい運動ができないという自分の限界のことを言います(厳密には少し違いますがこの考え方が理解しやすいと思います)。自分の限界の半分ぐらいの強度のトレーニングでないと免疫細胞が低下したり、炎症性サイトカインが分泌される原因になります。

睡眠による改善

食事や運動と同様に睡眠も感染症対策に重要です。

例えば、A型肝炎ウイルスのワクチンを摂取した対象者のうち、十分に睡眠をとった人とそうでない人で比較すると4週間後の抗体の量に2倍の差が付いたという報告がされています。(R

また、アメリカのNational Health and Nutrition Examination Surveys (NHANES)に登録されていた22,726人のアメリカ人を対象にした調査では、睡眠時間が5時間以下になると風邪や感染症にかかるリスクが上昇していることが分かっています(R)。

この結果から、睡眠時間は最低でも6時間は確保しないと風邪や感染症になる可能性が高くなると考えられます。

ただ、仕事や育児に追われて十分に寝る時間が確保できない、という人もいると思います。そんな人のために効率良く睡眠を取るための方法を下記に示しておきます。

効率良く睡眠を取る方法
  • 規則正しい生活をする…毎日同じ時間に寝ることで体にリズムが生まれます。日光に当たることも効果的です。日光に当たることで体内時計が正常に戻され体にリズムが生まれやすくなります。リズムができると、体も「今は休む時間だ」と認識するので睡眠を効率よく取ることができます。
  • 寝る前にはテレビ、スマホを見ない…テレビやスマホの画面は目から大きな刺激を与えてしまいます。そのため、寝ようとしても脳が活性化した状態になってしまい、なかなか深い睡眠にたどり着けません。もちろん、睡眠の前に必死に仕事をするという行為も脳を使うので禁止です。
  • 睡眠の90分前にお風呂に入る…スタンフォードの研究で睡眠は最初の90分がとても重要ということが分かっています。お風呂に入ると体温が上がるので体温を通常の温度に戻そうという機能が働きます。この機能を利用して睡眠を取ることで最初の90分の睡眠が飛躍的に向上します。

インフルエンザに感染しても重症化しない理由

インフルエンザに感染してもあまり症状がでない人もいれば、重篤な症状が出る人もいます。

例えば、Lloyd-Smithらのグループが行なった研究によるとH3N2型は成人以上に感染しやすく、重症化しやすいことが知られています。それに対し、H1N1型は子供でかかりやすく重症化しにくいことが知られています。この違いはどこから来るのでしょうか?

アリゾナ州のUCLAの調査チームによるとインフルエンザへの抵抗力はインフルエンザの種類だけでなくその順番も関係あるとしています。子供の頃に最初に感染したインフルエンザには抵抗力を獲得できるのですが、その後感染したインフルエンザに対しては子供の頃のような抵抗力は獲得できないようです。

その根拠としてH1N1型が流行した1955年に子供だった人はその後H1N1型が流行しても症状が出にくかったのですが、成人になってH3N2型に感染してもその後、症状が出やすいままだったという結果が得られています。

なぜ、子供の時に免疫を獲得できるのか?

なぜ成人になると免疫を獲得できないのか、なぜ最初に感染したインフルエンザには免疫を獲得できるのかは分かっていません。免疫機能は個人によってもバラツキが大きくこの辺の研究は進みそうにないですね。

一般的には近い種類のインフルエンザにかかるとその後似た種類のインフルエンザへの感染を防いでくれると考えられています。しかし、そう出ない場合も確認されています。

例えば、H2N2型はH1N1型と似たインフルエンザと言われていますが、H2N2型に感染したからといってH1N1型に感染しにくくなるという結果は得られていません。

誰がワクチンを受けるべき?

こうした研究からインフルエンザが流行した時に誰がワクチンを打つべきなのかわかります。過去のインフルエンザの流行具合から、すでに免疫を持っている人がわかるのでワクチンを後回しにした方が有効と考えられます。

インフルエンザは感染を繰り返していく中で進化していき、ワクチンが効きにくくなる事があります。実際に豚インフルエンザや鳥インフルエンザなど、動物にしか感染しなかったものが人に感染するようになっています。
こうした状況を回避するため、できるだけ早く流行を沈静化させなければなりません。そのために、感染しやすい人にワクチンの接種を呼びかけるのが有効とされています。

コロナウイルスについて

一番注目されている感染症にコロナウイルスがあります。感染が世界的に拡大し、経済にも大きな影響を与えています。

世界保健機関(WHO)のQ&Aによれば、現時点の潜伏期間は1〜12.5日(多くは5-6日)とされています。また、他のコロナウイルスの情報などから、感染者は14日間の健康状態の観察が推奨されています。

ウイルスは感染していても潜伏期間があるため、症状がないとしてもマスクや手洗いをして相手に感染させないように気をつけましょう。

Lloyd-Smithらのグループはコロナウイルスの研究も行っており、旅行者を調査しても効果は薄いと指摘しています。理由は半分以上の人が症状がなく感染していることに気づかないため特定するのが難しいからです。最近では入国する人全員に対して自宅で14日間の待機期間が義務付けられる、ということなので効果があると思います。

こうした感染症に対しては初動がいかに重要か分かりますね。今回は中国が対策をしなかったため世界中で拡散しています。

子供やお年寄りは重症化する恐れがある

抗ウイルス薬がない場合には対処療法を行うしかありません。対処療法は症状を和らげるだけであってウイルスを除去するわけではありません。ウイルスを除去できるかは個人の免疫に依存します。
子供やお年寄りは免疫力が弱いため、ウイルスを除去できずに重症化しやすい傾向にあります。他にも持病を持っている方は病気や薬の影響で免疫力が弱っていることもあります。

社会には健康な人がほとんどですが、そうでない人もいます。どんな人がいるか可能性を考えて可能な限り予防してましょう。

コロナウイルスはどこから発生したのか?

2020年になって流行しているコロナウイルスはヒト以外が感染源として考えられています。

中国の研究チームは、ヘビが感染源ではないかという結果を公表しましたが、コロナウイルスに感染しているヘビが確認できていないため信憑性が薄いと指摘されています(R)。(中国の研究チームはセントラルドグマに使われるコドンという材料がヘビの物に近いという結果から判断しています。)

陰謀説もあるようで、武漢のウイルス研究所で生物兵器の開発が行われていたのではないかという指摘をする記事もあります(A)。過去にはこの研究所の安全性の管理が悪いと指摘されていましたが、コロナウイルスとの関係を示すデータは出ていません。
こうした陰謀論は人を引きつけますが政治利用されるだけのことも多く、科学的なデータが出てこない限り信頼しない方がいいでしょう。

まとめ

今回はウイルスによる感染症の予防方法について紹介しました。

目に見えないために予防の効果が実感できないことが課題です。一人一人が意識的に予防しないと感染が治らないので、みんなで頑張りましょう。

参考文献
Q&A on coronaviruses
厚生労働省 咳エチケット
新型コロナウイルスに関するQ&A
How do viruses make us ill?
Statement in support of the scientists, public health professionals, and medical professionals of China combatting COVID-19
First childhood flu helps explain why virus hits some people harder than others
Childhood immune imprinting to influenza A shapes birth year-specific risk during seasonal H1N1 and H3N2 epidemics

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