自己効力感とは?成功に必要な挑戦し続けるメンタルを作る方法
- 困難なことにも挑戦できる様になりなりたい
- 自分に自身が持てる様になりたい
- 失敗に挫けず努力できる様になりたい
仕事で困難なことに直面した時に「やめておこうかな」と考える人と「それでも挑戦してみよう」と立ち向かう人がいます。人生で成功するためには困難なことにも挑戦して行かなければなりません。しかし、この反応の違いはどこからきているのでしょうか?今回はこうした挑戦するメンタルに必要な自己効力感について紹介していきます。
この記事を読むことで困難なことにもチャレンジできるメンタルの作り方が分かります。
自己効力感とは?成功に必要な挑戦し続けるメンタルを作る方法
一度何かで大きな成功を納めた人は「何をしても優れた人」と見なされ、新たなチャレンジする時にもお金や人脈が集まりやすい傾向にあります。
例えば、元サッカーの日本代表の本田圭佑はサッカー選手としての成功だけでなくサッカークラブのオーナーだったり、エンジェル投資家としても活躍しています。
この様に一度の成功は様々なことに波及していきます。そのため、人生で成功するためにも困難なことに挑戦し続けるメンタルを持つ、というのは成功のための重要な条件と言えます。
自己効力感とは
自己効力感とは1982年にアルバート・バンデューラによって提唱された概念で、「やればできる」という感覚の事を言います(R)。
根拠があるかとは関係ないため無謀な挑戦をするときもあるのですが、自己効力感が高いことで状況を改善するために動けるというメリットがあります。
例えばアルバート・バンデューラが行った実験に次のようなものがあります。
マウスを電気刺激が流れるカゴで飼育し、片方には電気刺激を止めれるボタンを置き、もう片方には何も置かず電気刺激から逃げられないようにしました。
ボタンと一緒に飼育されたマウスはボタンを押すことで電気刺激から逃れられることを学びます。しかし、ボタンがないとマウスは電気刺激を止める手段がないため自分にできることはないことを学びます。
次にそれぞれのマウスを電気刺激から逃れるための小さな段差が用意されたカゴに移し、電気刺激を与えます。
最初に電気刺激を止めるボタンと一緒に飼育されたマウスは電気が来ると段差を上るのですが、最初にボタンがなかったマウスは電気が来ても動こうとしませんでした。
この理由として電気刺激から逃れられなかったマウスは何をしても無駄だと学んだことが考えられます。この状態を自己効力感が低下したと言います。
最初に何をしても無駄だと学んだため、状況を変える簡単な努力さえしなくなりました。
人を対象にした実験
マウスで見られたような現象は人でも見られます。過去に何をしても失敗ばかりだったという人は新たなことにチャレンジできず、成功体験が多い人は自己効力感が高まり困難なことにチャレンジできます。
自己効力感は困難なことの挑戦できるかどうかだけではなく、その他にも様々な影響を与えてくれます。
- スポーツや勉強のパフォーマンスの向上
- 健康の増進
- やり抜く力を高める
- 就職活動を成功させる
それぞれの研究を紹介します。
オーストラリアで行われた研究では自己効力感を高める指導を受けた被験者はスポーツで行うような蹴る、投げるという動作のパフォーマンスが高まることが確認されています(R)。
また、勉強においても数学に対しての自己効力感が高い子供は数学の勉強を積極的に行い成績がよくなることが分かっています。
自己効力感の代表的な例ですね。子供を褒めた方がやる気になって自分から練習する様になりますよね。これも自己効力感が高まっているからです。
スタンフォード大学で行われた研究では自己効力感が高いほど健康的な生活になることが分かっています(R)。
自分の生活習慣を改善することで病気が快復すると理解するとタバコを吸ったり、食べ過ぎたりという行動を抑えるようになりました。
この効果の理由として、病気はどうしようもないものではなく、自分でコントロールできると認識したことが影響しているとされています。他にもリハビリに熱心になったり、運動するようになるなどの効果も確認されています。
自己効力感が高いと障害にぶつかった時にも自分で乗越えようとすることが知られています。障害に打ち勝つための幅広い知識を身につけ何とかして前に進む方法を見つけます。
逆に自己効力感が低い場合はすぐに諦めてしまいます。別の方法を見つけようともせず、自分にはできないと感じてしまいます。
成功のためには才能よりもやり抜く力が重要だと主張している研究者もいます。自己効力感があることで失敗しても投げ出さずに努力を続けるので成功する可能性も高まります。
カナダのウォータールー大学の研究では自己効力感が高い学生の方が面接を受けた数や内定率が高かったことが分かっています(R)。
自己効力感が高いことで不採用のストレスを受けても次の企業へと挑戦できたようです。自己効力感が低いと諦めてしまったり就職しないための言い訳を探す様になります。
1つの会社から内定をもらえるのはほんの数人だけです。そのため、お祈りメールが来ても「ほとんどの人が落ちるのだから仕方がない」と落ち込まずに頭を切り替える様にしましょう。
自己効力感を高める方法
自己効力感に様々な効果があることはわかりましたが、どうしたら高めることができるのでしょうか?
ケンブリッジ大学で行われた研究では自己効力感の75%が遺伝で決まり、25%が周りの環境が決まるという研究もあります(R)。しかし、 バンデューラは自己効力感は後天的に高めることができ、そのための方法は3つあるとしています。
- 他人の振る舞いを見て学ぶ
- 自分の理解を深める
- 自分がコントロールできることを増やす
人は自分に対する認識と挑戦するタスクに対する認識を比べ、タスクをクリアできると認識すれば挑戦します。実際に自分がタスクをクリアできるかどうかは関係なく、自分がタスクをクリアできると認識することが大事です。
そのため、具体的には下記のような方法があります
- 適切な難易度の問題に挑戦する
- 友人の成功体験を観察する
- 自分自身を励ます
- 適切なフィードバックをもらう
- 興味のあることに熱中する
バンデューラは小さな成功を積み上げることが大切だとしています。小さな成功でも積み重なれば自己効力感が高まり、最初では考えられなかった大きな課題に挑戦できるようにります。
とは言え、小さな目標が作れなかったりどうしても失敗することをイメージしてしまう、と言う人もいるでしょう。そこで、役立つテクニックを紹介します。
何かポジティブなことを見つけて終える
人にはバイアスというものが存在します。何か辛いことがあったとしても終わる時にポジティブなことがあれば辛い経験ではなく楽しい経験として思い出す様になります。
例えば、一生懸命部活動をして来たのに試合に勝てなかった、という経験があるとします。試合に勝てなかった、というところに注目してしまうと辛い練習はただ辛かっただけでもう二度とこんな辛い思いをするのは嫌だ、と考えてしまします。しかし、チームは負けたけど自分が良いプレーをしていたと思えれば辛い練習が充実したものの様に感じれるので再び辛いことにも挑戦できる様になります。
こうした現象をノーベル賞を受賞したダニエル・カーネマンが発見しています。
患者に大腸内視鏡検査を行なった時の苦痛を時間ごとに10段階で計測してもらいました。肛門からカメラを入れて大腸の中を見る非常に辛い検査です。
Aさんは7分後に苦痛がピークに達し8を記録し、すぐに検査が終了しました。Bさんは10分後に苦痛がピークに達し同じく8を記録し、その後も5程度の痛みを感じながら22分で終了しました。
この時、Bさんの方が苦痛の総量(実感計測値)が大きいため、検査後に行なった全体の評価でもBさんの方が苦痛を感じたと評価すると予想しました。
しかし、結果は逆になりました。Bさんの方が苦痛の総量が多いにも関わらず、苦痛の程度が少ないという結果になりました。
この結果から2つの法則が導き出されました。
- ピーク・エンドの法則…記憶に基づく評価はピーク時と終わりの時の苦痛の平均で決まる。
- 持続時間の無視…検査の持続時間は苦痛の総量の評価にほとんど影響しない。
つまり、何かに挑戦するときは努力を続けることに集中し、無理をしすぎず終わりに向けて努力量を減らしていくと失敗した時にも自己効力感が低下しにくい、という事ですね。
しかし、失敗した時にはバイアスがかかってしまい、実際以上に物事を悪く判断しがちになります。こうしたバイアスを取り除く方法についても紹介して行きます。
ヒューリスティックバイアスを取り除く
ヒューリスティックバイアスは説明しにくいので例を見て行きましょう。
次の問いに答えて見てください。
Q;あなたは自分の車にどのぐらい満足していますか?
この答えはすぐに出すことができるでしょう。理由は自分が車に乗って楽しんでいると言う経験をしているからです。では、下記の質問はどうでしょうか?
Q;あなたはどんな時に車についての満足を感じますか?
おそらく答えがすぐに出ないのではないでしょうか?車について満足を感じるのは車のことを考えた時でその時々で車のことについて考えないからです。
いちいち「あ、今車に満足してるな。」と考えませんよね。
最初の質問で満足度について簡単に答えることができたにも関わらず、どんな時に満足するかはなかなか答えられません。
これは最初の「あなたは自分の車にどのぐらい満足していますか?」を「車のことを考えた時にどのぐらい満足しているか?」置き換え、そのことだけに焦点を当てたからです。今までの経験から出した答えではありません。
こうした問いの置き換えをヒューリステックバイアスと言います。挑戦しても失敗してしますとこうしたヒューリスティックバイアスが起こりやすくなるので物事を悪い方へ考えがちになってしまいます。
そのため、失敗したとしても何か学べたことはあったかな?あとで失敗せずに今失敗できて良かった、などポジティブな面を見つけようとすることでこうしたバイアスを取り除く事ができます。
自己効力感が高すぎても問題
自己効力感が高くないと挑戦し続けれないのですが高すぎても無謀な挑戦をしてしまい挫折する原因となります。
そのため、自己効力感が実際の能力よりも少し高いぐらいだと適度な難易度にチャレンジして成長できます。
ただ、実力にあった行動をしても失敗することもあります。そんな時に自己効力感を下げてしまわない方法として自己肯定感を高めることをオススメします。
自己肯定感とは?
自己肯定感とは1980年代にクロード・スティールによって提唱された概念です。「失敗したけど次頑張ろう」、「自分がダメな人間だ、と感じているな」など嫌なことがあっても自分を肯定的に考えれる感覚の事を言います。
自己効力感のように自分に自信があるわけではなく、能力に関係なくありのままの自分を受け入れることを言います。そのため、何か挑戦をして失敗してもストレスを感じにくくなります。
85人の被験者に審査員の前でプレゼンを行ってもらい、自己肯定感とストレスの感じ方の関係を測定しました。
その結果、自己肯定感が高い人はストレスを感じにくくなっていることが分かりました。
この効果は心理的なものだけではなくコルチゾールというストレスに反応して放出されるホルモンが減るなど生理的現象からも確認されています。
この様に自己肯定感が高ければいいのですが、自尊心が邪魔をしてしまうことも知られています。
自尊心とは
自尊心とは自分自身が善良で価値のある人間だという信念に基づいています。昔から自尊心のあるひとは活力にみなぎり友人が多く、人生に対して前向きということが言われていました。
しかし、最近では自尊心に対して疑問が出てきています。
自尊心は友人や家族など自分に近しい人よりも親しくない他人からの影響を受けやすいことが分かっています。確かに母親が褒めてくれたとしても「親なんだからそういうだろ」と思ってしまいますよね。それよりかは全く知らない人に「気がきくね」、「偉い子だね」と言われた方が嬉しいと思います。
しかし、こうした言葉には根拠がありません。一時的な振る舞いを見ての判断なので本当の自分を表していることは少ないでしょう。
自分の自尊心が正しいかどうかは自尊心の理由を検討しないといけません。家族の支えや目標達成のための過去の努力などがあれば健全な自尊心を持っている可能性が高まります。
しかし、そうした理由がなければ自尊心によって様々なデメリットが生じます。
- 自分を過大評価する
- ナルシストになる
- 努力の目的を誤ってしまう
自分を過大評価する
ワシントン大学で行われた研究では自尊心の高い人が自分の能力を評価すると他人が評価した時よりも自分のことを高く評価しやすいことが分かっています(R)。
どうやら、自尊心の高い人は客観的に自分を見ることができず感情的に自分の能力を評価しているようです。これでは無謀なことにチャレンジしてしまい、挫折する原因になってしまいます。
ナルシストになる
ナルシストは他人と自分を分離し自分が他人よりも優れた人間であると思っています。自分のことにしか興味がないので他人が不幸になろうとも気にしません。
また、ナルシストは自分のことが大好きなので自分を攻撃してくる人に対して異常なまでに仕返しをしようとします。少しからかわれたり、悪口を言われただけで相手に暴力を振るう人などが当てはまります。
こんな人とは関わりたくないですよね。関わるとこっちだけが疲弊してなんの得も無いです。
努力の目的を誤ってしまう
自尊心が高い人は自分の自尊心が傷つくことを恐れます。自尊心によって自分を心地よくできるのですが、自尊心が傷つくと一気に不安や無力感に襲われるからです。そのため、仕事がうまくいかない時には数字を偽装したり、誰かを陥れることで自分の自尊心を守ろうとします。
他人からの評価に基づいて行動することを外発的動機づけ、と言います。自分の楽しみや興味など自分の内側から出た欲求に基づいていないので間違った努力になっています。
自尊心とセルフコンパッション
間違った自尊心を持っていると現実を突きつけられた時に自己肯定感が崩壊してしまい精神的に強いストレスになってしまいます。こうした人の脆さを補強してくれるのがセルフコンパッションです。
セルフコンパッションとは自分の感じている苦しみを思いやりを持って扱うことを言います。例えば、この苦しみは自分だけの物ではなく他の人も共通して感じていると認識する、などです。
重要なのは苦しみを拒絶するのではなく、全て受け入れるということです。
セルフコンパッションが高い人は自分の成功や失敗が一時的なものであることを理解しています。一方、自尊心の強い人は他人からの評価が良かった時には一気にやる気を発揮し、逆に他人の評価が低かった時にはやる気が出ず、回避的な行動を取ることが知られています。
重要なのは自尊心とセルフコンパッションを両立するということです。自尊心が高かったとしてもセルフコンパッションも高ければ失敗した時の不安や抑うつ的な症状が少なくなることが分かっています。
デューク大学で行われた研究ではセルフコンパッションが強い人は試合や舞台で取り返しのつかないミスをした状況を想像しても恥や無力感を感じにくいことが分かっています(R)。一方で自尊心はこうした反応に全く役に立っていませんでした。
また、別の実験ではセルフコンパッションが高い人は相手の評価をありのままに受け入れることも分かっています。しかし、自尊心が高いと中立的な意見をもらったとしても不満を持ってしまうようです。
このようにセルフコンパッションが高いことでストレスを受けても必要以上に自分を傷つけなくて済むようになります。
セルフコンパッションが高いとまるでスポンジのように全てを受け入れることで自己肯定感が高まり自己効力感の低下が抑えられる、ということですね。
詳しくは以前の維持を参考にしてください。
自尊心にとらわれないためのセルフコンパッション
では、自尊心を克服するためのセルフコンパッションを高めるためのトレーニングを紹介します。
まずは、自分が他人よりも優れている、劣っていることで嬉しくなったり悲しくなったりすることを紙に書き出してみましょう。
例えば、背が低い、作業が速い、文章を書くのが苦手、などです。
上記で挙げた項目についてなぜ他人よりも優れている、または劣っているのか考えましょう。それだけの努力をしたから、持って生まれた才能だから、周りの支えがあったから、などです。
また、なぜ嬉しくなったり、悲しくなるのかも考えましょう。例えば努力したのに報われないから、お金が得られないから、興味があることだから、などです。
次に上記で挙げた項目が自分の価値に影響するのか考えましょう。なぜ他人よりも優れていたり、劣っていることで自分の人間的価値に影響するのでしょうか?影響があるとしたらそれを自分がどの程度コントロールできるのか考えましょう。
コントロールできないものに対して苦しんでいる自分に対してあなたはどんな風に思いやりの言葉を投げかけますか?相手が苦しんでいることを理解して優しい言葉を書いてみましょう。
こうしたトレーニングを5分から10分程度行うことで自分に対して思いやりの心を持てる様になります。
まとめ
今回は自己効力感について紹介しました。
失敗しても挑戦し続けるためには自己肯定感と自己効力感を身につけなければなりません。こうした能力があればどこかで成功しその成功が波及して様々な成功が得られる様です。
参考文献
ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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