部下のやる気を引き出す!制御焦点理論とは

話の捉え方を決める、制御焦点理論
この記事はこんな悩みを解決します
  • なぜ、同じことを言っても受け取り方が違うの?
  • 部下との意思疎通がうまくいかない
  • 制御焦点理論について知りたい

モチベーションの引き出し方は個人によって異なります。多くの上司は報酬をぶら下げれば部下のやる気を引き出せると思っているようですが実際は違います。

この記事を読むことで部下の正しいモチベーションの引き出し方が分かります。

部下のやる気を引き出す!制御焦点理論とは

同じ指示でもやる気を出す人とそうでない人がいます。

その理由としてコロンビア大学のE. Tory Higginsによって作られた制御焦点理論の制御志向という考えが参考になります。

制御焦点理論の2つの焦点
  • 促進焦点
  • 予防焦点

促進焦点とは

喜びと痛みを比較したときに喜びに焦点を当てていることを言います。

この状態だと失敗することよりも今の現状からより良い状態になることに焦点を当てているため、挑戦的な取り組みをするようになります。うまくいったときには喜び、うまくいかなかったときには落胆します。

予防焦点とは

喜びと痛みを比較したときに痛みに焦点を当てていることを言います。

この状態だと失敗したときのリスクに注目しているため、ガイドラインやルールに従い安全性や責任を重視するようになります。うまくいったときでも静かで、うまくいかなかったときにはイライラしてしまいます。

制御焦点理論の使い方

人には自分の価値観や信念を維持しようとする性質があります。

そのため、自分の制御志向に合った仕事をすると自分が正しい行いをしていると認識しやすくなり人生の満足度が高まります。

制御志向に合った仕事のやり方

トロント大学で行われた研究では制御志向に応じた仕事のやり方でモチベーションが高まることが分かっています(R)。

制御志向に合った仕事のやり方
  • 促進焦点の人は画期的で新しい方法で成功するように励ますことでモチベーションが高まります
  • 予防焦点の人は実績のあるマニュアルで失敗しないように戦略を練ることでモチベーションが高まります

ちなみに、促進焦点の人にはポジティブなフィードバック、予防焦点の人にはネガティブなフィードバックが効果的ということも分かっています(R)。

イサカカレッジで行われた研究でもフィードバックするときに目的と方法がその人の制御志向とマッチしているとパフォーマンスが改善することが分かっています(R)。
・促進焦点の人には給料アップのために新商品の開発をしよう
・予防焦点の人には仕事をクビにならないために自分の仕事をこなしましょう
というとパフォーマンスが改善されます。

制御志向と役割

また、アムステルダム自由大学で行われた研究ではチームの役割が明確な場合、促進焦点だと予防焦点に比べて大きくパフォーマンスが低下することが分かっています(R)。

制御思考と役割

・促進焦点の人は役割が明確だと自分の仕事が制限されているように感じやる気が低下します。
・予防焦点では自分の責任が明確なため責任を果たすために一生懸命に働くようになります。
一方、役割が曖昧だと促進焦点のは150%パフォーマンスが高まるのですが予防焦点の人と大きな違いはありませんでした。

役割を曖昧にした方が両方がある程度のモチベーションを保つことができるようです。

コミニケーションでの応用

ミシガン州立大学で行われた研究では非言語コミニケーションの捉え方も制御志向によって違うことが分かっています(R)。

制御思考とコミュニケーション

促進焦点の人に働きかけたい場合は
・手を広げる動き
・前傾姿勢
・体の動き
・話すスピードが速い
などで説得力が増すことが知られています。
逆に予防焦点の人に働きかけたい場合は
・後ろに姿勢を傾け
・体の動きや話すスピードが遅い
ほうが説得力が増すようです。

相手の制御志向に応じてプレゼンの仕方を変えてみてもいいかもしれません。

リーダーの制御志向の影響

リーダーの制御志向の影響

イスラエルのバル=イラン大学の行った調査ではリーダーの制御志向によってチームの仕事の取り組み方も変わるという報告もされています(R)。

リーダーの制御思考の影響

チームはリーダーの制御志向と同じになる傾向があります。
・リーダーが促進焦点の場合、部下がクリエイティブになりリスクを負いやすくなる、感情面の配慮ができるようになることが確認されています。
・リーダーが予防焦点の場合、部下は安定を求めるようになったり、ネガティブな結果に敏感になり仕事の質や効率を練りこんでいくようになることが確認されています。

こうしたことが起こる理由としてリーダーの言動が部下に影響を与えていることが考えられています。
促進焦点のリーダーは部下を活動を活発にする言動が多くなり、予防焦点のリーダーは活動を禁止したり抑制したりする言動が多くなることが確認されています。

リーダーの不満は自分のせいかも?

リーダーがチームに対して不満を持っている原因はもしかしたら自分にあるかもしれません。
「この仕事をするためには事前に報告しなさい」、「これはやっていはいけません」などネガティブな発言が多いとメンバーも予防焦点になっていき、怒られないように余計な仕事をしなくなります。

では、部下が促進焦点なのか予防焦点なのか見極めるためにはどうしたらいいのでしょうか?

部下の制御志向の見極め方

促進焦点か予防焦点かを測定するアンケートもありますが部下にアンケートに答えてもらう、と言うのが難しい場合もあると思います(R)。

そこで、その人の個性から促進焦点か予防焦点か判断できるという研究もおこなわれているので紹介しておきます。

イサカカレッジでは科学的に信頼されているとされているビッグ5という性格診断などを用いて制御焦点理論との関連を調べています(R)。

性格からわかる制御思考
  • 自尊心や外向性、開放性が高く、不安や神経症的性格が低いと促進焦点の可能性が高い
  • 自尊心や外向性、開放性が低く、不安や神経症的性格が高いと予防焦点の可能性が高い

ちなみに、性格の考え方についてはビッグ5という物を使っています。

他にも、ラドフォード大学によって行われたメタ分析では楽観的かどうかが促進焦点と高い相関があるという報告もされています(R)。

前向きでチャレンジングな人は促進焦点、後ろ向きで保守的な人は予防焦点、といった感じでしょうかね。

まとめ

今回は制御志向によってやる気の出方が異なることを紹介しました。

一般的に行われているような成功したときの自分の姿を想像させるというのは促進焦点の人にしか効果がなく、予防焦点の人には危機感を煽る方が効果的ということですね。

上司はこうした一人一人を見る力が必要とされます。

部下の制御志向によってやる気の引き出し方も変わるでしょうし、複数人で仕事を行うときにも互いの制御志向を知らなければ意思疎通がうまくいきません。

相手の制御志向に合った指示をするためにも自分をコントロールする能力がなければなりません。感情的になってますます悪い方向に自体が進んでいくこともあります。

自分をコントロールするためには感情的知性という考え方が参考になります。下記の記事も読んでみてください。

参考文献
Wikipedia

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