個人事業主になるには?副業をする人が知っておくべきお金、手続き、法律について

個人事業主になるには?副業をする人が知っておくべきお金、手続き、法律について
この記事の対象者
  • 個人事業主になることを考えている
  • 個人事業を始める時に必要な知識を学びたい
  • 個人事業に関連する知識を確認したい

副業が許される会社も増えて来たので個人事業を始めたい、という人も多いと思います。しかし、会社員をしていると税金・保険、融資・出資の仕組みなどはよくわからないですよね?そんな人のために、個人事業を始める時に必要な手続きやお金の集め方について紹介していきます。

この記事を読むことで個人事業主になるために必要な知識が身につきます。

個人事業主になるには?副業をする人が知っておくべきお金、手続き、法律について

個人事業主として副業をしたいと思っても勝手に始めては行けません。世の中の仕組みを理解しなければ、自分が行うべき義務や自分が有利になるための制度を見過ごすことになります。下記の4つについてしっかりと理解して事業を始めましょう。

個人事業主になるために知っておきたいこと
  • 税金
  • お金の集め方
  • 個人事業を始める準備
  • 開業時に注意すべき法律

税金

副業を得る時には収入ばかりではなく、税金のことも考えましょう。収入ばかりに目がいっていると、無理して働いたけど収入がそんなに上がらない、ということになりかねません。本業と副業でどれぐらいの所得になり、どのぐらいの税金を支払わなければならないのか趣味レーションをしてみましょう。

所得にかかる税金

副業によって収入を得た場合、個人で確定申告を行なって納税することになります。確定申告は1月から12月までに得た収入を、翌年の2月16日から3月15日までの間に申請しなくてはなりません。ちなみに、副業を会社に内緒にしておきたいと思っても、住民税の徴収の時に他の人よりも金額が高いことによってバレる可能性があります。そのため、副業をする時には必ず勤め先の就業規則に従うようにしましょう。

確定申告をしておくことでメリットもあります。個人事業主が確定申告をすることで赤字を時期以降に繰り越すことができます。例えば、翌期に黒字になったとしても前期の赤字を差し引くことで所得を少なく申請することができます。最大3期まで繰り越すことができるので確定申告をしておきましょう。

消費税は納めないといけないの?

個人事業主の消費税の課税対象となるのは、前々年の課税売上高が1000万円以上の事業者です。1000万円を超えていない場合は消費税が免除されます。つまり、新規事業を始めてから2年間は売上が1000万円を上回らない限りは、消費税が免除されます。

税金を滞納するとどうなるの?

税金の滞納は公共料金や金融機関ほど甘くはありません。すぐに滞納処分が下されます。例えば、下記のような処分が下されます。

滞納処分

  • 納期限の翌日…延滞金の発生
  • 納期限から50日以内…督促状の発行
  • 督促状発行から10日以降…給料、預貯金、不動産、自動車などの差し押さえ
  • 差し押さえ以降…換価処分が行われ国庫に当てられる

滞納処分を受けると許認可が一定期間受けられなくなり事業が続けられなくなります。資金繰りと日々の事務処理を徹底するように気をつけましょう。

帳簿は何をいつまで保存すればいいの?

備えておくべき帳簿は現金出納帳・固定資産台帳・預金出納帳・総勘定元帳・仕訳帳などです。他にも領収書・請求書・見積書・仕入伝票・送り状なども備えておきましょう。また、領収書がもらえない場合には出勤伝票を起こすことで経費として計上することもできます。保存期間としては決算関係の帳簿が7年、領収書や請求書は5年です。これらは法律で決まっているので確認しておきましょう。

お金の集め方

個人事業を始めるにあたって1番の問題はお金です。借りるのは簡単ですが、借りることだけを考えていると、借金に追われる人生になったり、自己破産をしなければならなくなります。まずは、お金を借りる前に次の質問に答えてみましょう。

お金を借りる前に考えること

  • 本当に必要なお金か?
  • 借りたお金を返すことができるか?
  • 家族の同意は取れているか?
  • 事業がうまくいかない場合のことも考えているか?

事業のアイディアを考えている時にはポジティブバイアスがかかってしまい、全てを楽観的に考えてしまいがちです。そのため、最悪のケースも想定して計画を立てましょう。一度、融資を受けて返せなかった場合は、追加融資がなかなか受け取ることが出来ません。その時に自分の人生がどうなっているか考えてみましょう。

それでもお金を借りる必要があると思えば、金融機関や日本金融公庫からお金を借りましょう。お金の借り方にも色々あるので紹介していきます。

融資か出資か?

個人事業を始める上で、事業を軌道に乗せるためにお金が必要です。主に、融資と出資によりお金を借りることができます。どちらが自分に適しているのか考えましょう。

  • 融資…金融機関からお金を借りるので、返済の義務があります。しかし、経営に口出しされることが少なく、自分の好きなように会社を経営できます。
  • 出資…ベンチャーキャピタルや個人投資家からお金を借りるので、返済の義務はありません。出資者には株価の上昇や配当金でお金を返していきます。しかし、経営に口を出されることが多く、自分の好きなように経営できなくなります。

ちなみに、個人事業主として起業する場合は無担保・無保証で融資を受けれる制度があります。日本政策金融公庫や地域の起業家を支援している金融機関は相談に乗ってくれます。オススメは日本金融公庫の新創業融資制度です。興味のある方はこちらを参考にしてください。

補助金のもらい方

個人事業を立ち上げる人や法人化により新たな事業展開を考えている人は、国や地方自治体からの補助金に応募できます。補助金は返済の義務がないのですが、お金の使い道についての報告が必要だったり、利益が出た場合には返済しなければなりません。かなりメリットがあるので募集が始まったら、申請条件を満たせるかどうか確認して、すぐに申請書の作成に取り掛かりましょう。申請時のポイントとしては6つあります。

補助金を申請するときのポイント
  • 事業の独創性…事業内容やノウハウが市場や顧客に新たな価値を生み出しているか?
  • 事業の実現可能性…サービスや商品のコンセプトが明確になっているか?必要な人員や事業のパートナーに目処が立っているか?
  • 事業の収益性…市場のニーズを捉えていて予想している収益が妥当で信頼できるものか?
  • 事業の継続性…事業がうまくいかない場合にも事業が継続できるような対策が考えられているか?
  • 資金調達の見込み…事業を開始するための十分な資金が確保できる見込みになっているか?
  • 認定支援機関による支援の確実性…認定支援機関から補助金を受け取る場合に確実に支援を受けられるか?

これらの質問は事業を計画するときに最低限考えなければならないポイントです。この他にも様々なチェック項目があるので下記にまとめておきます。

創業時の自己チェック
  • なぜその事業をやるのか、理由は明確か?
  • その事業について十分な知識、経験があるか?
  • 事業内容はニーズとマッチしていますか?
  • 事業内容と社会的背景に関係がありますか?
  • 市場の現状と動向について理解していますか?
  • 顧客の年齢、性別、何に困っている人か、家族構成などが明確に描けてますか?
  • 競合他社の情報を調べた上で競争力はありますか?
  • 他社にない自分の強みは何ですか?それが顧客にどのようなメリットがありますか?
  • 仕入れ値、売り上げ、利益など売れる仕組みは出来ていますか?
  • 必要な従業員は確保できますか?
  • 開業場所は適した場所ですか?
  • 事業規模は適正ですか?
  • 必要な資金は明確になっていますか?
  • 家族の理解は得られていますか?
  • 応援してくれる人はいますか?
  • どのようなリスクがあると認識していますか?
  • 失敗した時に事業の方向をどのように変えますか?方向転換したときに収益は得られますか?

個人事業を始める準備

個人事業を始めようとしている人は保険や事業の準備の仕方など、様々な疑問を思い浮かべると思います。事業内容や個人の状況などによって本当に様々な疑問があるので、その中でも多くの人に当てはまると思われる疑問について答えていきたいと思います。

個人事業主はどんな保険に入るの?

会社員を辞めず副業で個人事業主になる場合は年金、保険に変更はありません。しかし、会社員を辞めて個人事業主としてだけで収入を得るという場合は、会社員とは違う年金、保険に加入する必要があります。まとめると下記のようになります。

  • 厚生年金→国民年金基金
  • 健康保険→国民健康保険
  • 雇用保険→小規模企業共済

個人事業主は会社員のような厚生年金に加入できないので、自分で国民年金基金に入らなければなりません。また、健康保険については個人で国民健康保険、失業手当については小規模企業共済に加入する必要があります。さらに、下記のような職業の場合は労災保険に加入できるので加入しておきましょう。

自動車を利用する旅客・貨物運送事業、土木・建築・解体業、漁業、林業、医薬品の配置販売、再生利用廃棄物の収集・運搬・選別等の事業

退職前に企業の準備を初めてもいいの?

会社に所属している間に起業の準備をしてもOKです。しかし、勤務時間中に起業の準備をするとNGです。有給消化などをしながら起業の準備をするようにしましょう。また、起業の準備中にかかった費用は「開業費」や「創立費」などの経費として計上できるので、領収書などは取っておくようにしましょう。注意すべきなのは会社の顧客や技術を盗むことです。競合する事業を立ち上げそちらに取引の移行などを持ちかけると訴えられるので注意しましょう。

どうやってコネクションを作るの?

ビジネスを行う上で人との繋がりは最も重要です。そのためには、様々な集会に参加することをおすすめします。SNSなどで全国の人と簡単に繋がることができるようになりましたが、地方で行われている異業種交流会やサークルに参加する、という方法も効果的です。また、繋がりを作るときには「自分が相手に対してどんなメリットをもたらすことができるのか」を考えましょう。

ペンシルバニア大学のアダムグラントも、自分が利益を得ることより相手に利益を持たすことを考えている人の方が成功しやすい、という本を出しています。相手へメリットをもたらすことで繋がりも強くなり、自分にメリットのある人を紹介してもらえる可能性も高まります。

開業届を提出しないと行けないの?

基本的には個人事業を始めた場合は、税務署と都道府県税務署に開業届けを1ヶ月以内に提出します。しかし、提出しなくても罰則はありません。所得に対する税金を納めなかった場合は罰則があるので注意しましょう。

また、開業届を提出することで上記でも紹介した赤字を翌年に繰越すなどの税制上のメリットがある青色確定申告が使えます。一方、開業届を提出しない場合は税制上のメリットが受けられない白色確定申告を使うことになります。

自宅を事務所にできるの?

自宅兼事務所として利用すると低コストで光熱費や通勤費などを節約できると言うメリットがあります。しかし、自宅を事務所として利用できないケースもあるので確認しておきましょう。

自宅を事務所として使えない場合
  • 家族と同居している…家族と同居している場合は電話がかかって来た時にプライベートなのか仕事なのか分からなくなるのでやめた方が良いでしょう。
  • 近隣の理解が得られない…荷物が届いたり、来客が多い、と言う場合は近隣の理解が得られない可能性が高いです。駐輪場の混雑や治安の悪化にも繋がるので気をつけましょう。
  • 公営住宅に住んでいる…公営住宅法や地域の条例によって規制されています。
  • 住宅ローンを借りている…自宅部分を改築して店舗にすると、店舗の部分には住宅ローンが適用されないので、資金使途違反になる場合があります。

また、賃貸を借りる時には「現状回復の義務」、「数ヶ月分の家賃の支払い」、「敷金などの償却」などリスクもあるので注意して借りるようにしましょう。

家族に給料を支払えるの?

個人事業を行う上で家族に働いてもらうと言うことがあると思います。その場合、「専従者給与」として給与を支払うことで経費として計上できます。ただし、労働の対価として課題な報酬でないこと、青色事業専業従者給与に関する届け出書を提出していること、などの条件があります。また、専業従者給与が年間103万円を超える場合は扶養控除が受け取れなくなるので注意しましょう。

従業員を雇う時にはどうしたらいいの?

従業員を雇用する場合は下記の4箇所へ届け出を出さなくてはなりません。

  1. 税務署
  2. 労働基準監督署
  3. ハローワーク
  4. 年金事務所
税務署

給与支払事務所の届け出を出さなくてはなりません。「源泉所得税の納税の特例の承認に関する申請書」を提出することで源泉徴収分の支払を年に2回にすることができます。これを行わない梅は毎月届け出なければなりません。

労働基準監督署

1人以上雇用している場合は労災保険の届け出を出します。もし、10人以上雇用している場合は就業規則を作成して届け出を出します。

ハローワーク

1週間の労働時間が20時間以上で31日以上雇用する場合は、雇用保険の届け出を出します。

年金事務所

健康保険、厚生年金保険の手続きを行います。従業員の数が4人以下の場合は加入する必要がありません。しかし、従業員は個人で国民健康保険、国民年金に加入する必要があります。

嫌がらせへの対策

事業をしていると悪質なクレーマーに悩まされることがあります。そんな時のためにクレーマーへの対応手順を覚えておきましょう。

  1. お詫びと共感
  2. 事実確認
  3. 解決策の提示
  4. お詫びと感謝
お詫びと共感

まずはクレーマーの気持ちになってお詫びしましょう。相手が嘘をついている、自分の責任ではない、という気持ちがあると、それが態度に出て自体が悪化する可能性があります。

事実確認

お詫びをしたところで改めて事実を確認しましょう。メモを取ったり、適切な担当者と対応することで相手が落ち着きを取り戻してくれる可能性があります。

解決策の提示

顧客の問題が理解できたところで、適切な解決策を提示しましょう。自分では対応できない場合は権限のある人に相談します。自分で勝手に対応して、さらにトラブルを招くと最悪です。

お詫びと感謝

解決策を提示した後は再びお詫びをしましょう。クレームは見方を変えると、サービスをより良くするための改善方法を示してくれるものです。黙って顧客が離れてしまうよりもクレームが来た方がメリットになるときもあります。

こうした対策をしても理不尽なクレームを行ってくる人もいます。悪質なクレームについては法律の力を借りるようにしましょう。
最近ではSNSなどにより悪意のある書き込みが行われる場合があります。ネットでの嫌がらせは顧客を減少させ、従業員のモチベーションを低下させ、会社の信用が低下します。ネットでの嫌がらせについては、プロバイダ責任制限法という法律で発信者の情報を開示させ、削除するように請求できます。面倒ですが、こうした対応は弁護士や自分で行うことになります。

開業時に注意すべき法律

開業する時にはビジネスとして成り立つかだけに注目しがちです。しかし、考えているビジネスが法律に違反しないかも考えなくてはなりません。どのような法律があるのかいくつか紹介していきます。

食品営業に関する法律

飲食店やカフェなどを始める時には管轄の保健所から許可をもらう必要があります。衛生的に問題のない環境が作れているか、使用する水が国の基準を満たしているか、などです。どのような事業をするかで検査項目も変わってくるので、保健所に相談にいくのが一番早いです。無許可で営業していると罰則があるので注意しましょう。

店舗ビジネスに関する法律

店舗ビジネスを行う場合は風営法に違反しないか確認しましょう。風営法は未成年が利用する場合の対策が取られているか、若者の溜まり場にならないか、地域の治安が悪化しないか、などを取り締まるための法律です。法律だけ読むのではなく、地域の警察署の生活安全課に問い合わせるのが一番確実でしょう。

ネットビジネスに関する法律

インターネットで物を販売するのは手軽に始められる、と言うメリットがあります。しかし。特定商取引法に引っかからないか注意しましょう。特定商取引法とは事業者が守るべきルールやクーリングオフなどの消費者を守るためのルールが書かれた法律です。通信販売の場合は他社の行なっている方法に乗っ取って行えば問題ないですが、広告の情報が不十分な場合などはトラブルになる原因となります。気になる人は消費者庁のホームページで確認してください。

物作りに関する法律

何か物を作って販売すると言う場合は商標・著作権・特許を侵害していないか確認しましょう。まずは検索して販売するサービスが他社の権利を侵害しないか確認しましょう。もし、他社の権利を侵害している場合は損害賠償請求、差し止め請求、信用回復請求、などが行われる場合があります。

ダンピングに関する法律

正統性のない安売り(ダンピング)は罰則を受ける場合があります。なぜなら、1つの企業が赤字覚悟で安売りをすることで、他社の製品に対する購買意欲が低下させるからです。それにより、顧客を奪われたり顧客から苦情が出てくる可能性があります。ただし、正当な理由があれば安売りをしてもよいです。廃棄するよりも一円でも売った方が廃棄費用がかからなくて特をする、と言う場合は安売りをしても問題ありません。

まとめ

今回は個人事業を始めようとしている人に必要な知識を紹介しました。

個人事業を始める時には一人で始めるのではなく、地域の創業をサポートする施設に相談にいくのが基本です。そうしたサポートを受けることで、弁護士や税理士などに無料で相談に乗ってもらうことも出来ます。通常は1時間相談に乗ってもらうだけでも数万円必要だったりするので、かなりお得です。

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