学習意欲を高めるための心理学

学習意欲を高めるための心理学

自ら学ぶ子どもを育てるためにはどうすればいいのでしょうか?
➡︎興味を引き出すためのサポートを行いましょう。

大人になっても学習意欲が高まるメカニズムは同じです。今回は子供の興味を持つようになるメカニズムと大人がどのようにサポートしなければならないか調査した論文を紹介します。

学習意欲を高めるための心理学

この記事は2010年にSuzanne Hidiによって発表された論文に基づいています

学習意欲を高めるためには子供の興味を引き出さなければなりません。
では、子供の興味はどうやって生まれるのでしょうか?

子供の興味はどこから来るのか?

➡︎個人の外側から来る興味と個人の内側から生じる興味がります。
外側から生じる興味は長く続かないのに対し、内側から生じる興味は持続しちょっとしたキッカケで再び引き出されます→(R)。

両方とも興味が発生するフェーズと興味が持続するフェーズがあります。
それぞれのフェーズで努力の程度や自己効力感(自分が周りの環境に影響を与えれるという感覚)、目標設定、目標のための自己制御が変わっていきます。

どのようなフェーズがあるのか?

➡︎著者たちはこの論文の中で4つのフェーズがあるとしています。
その4つとは下記の通りです
・場面に応じた興味
・場面に応じた興味の持続
・自分の中から生じた興味
・自分の中から生じた興味の発達

興味はそれぞれのフェーズでの感情や知識、価値観によって変わってきます。まだ、興味を持ち始めた段階だと知識や価値観も低いと考えられます。しかし、感情を大きく動かされ自分で好奇心を満たしていけば知識や価値観も高まり、初期の頃とは違った興味が湧いています。

場面に応じた興味

➡︎短期間の感情と認知プロセスにより発生します。

例えば、予想外の出来事に驚いて発生する興味やたまたま読んだ本に興味を持つなど個人的出来事によって発生します。
このフェーズでは子供がまだ知らない情報を与えたり、情報を得るためのデバイスを与えることで興味が発生しやすくなります。

場面に応じた興味の持続

➡︎読み始めた本を最後まで読みきるなどのタスクやスポーツチームに入って友達と関わるなど個人的な体験を通じて興味が維持されます。

プロジェクトを指導したり、グループで協力するなどの状況が興味を維持させてくれます。サポートは重要ですが過度にサポートすると興味を失ってしまいます。
ちなみに、興味が維持されてるからと言ってその興味がさらに強まるわけではありません。

自分の中から生じた興味

➡︎新しく得られた経験や知識についてポジティブな感情が得られた経験を元にその後も繰り返し興味のあることを探し出します。

自分の周りの疑問に対して好奇心が高まり、あまり努力したと感じなくても好奇心が満たせるようになります。
ちなみに、すぐに疑問が解決しない方が賢くなることや困難なことに直面したときに励ましがなければ諦めてしまうことが知られています。

発達した個人の興味

➡︎好奇心を満たすことにポジティブな感情を発達させた人は自分の興味のため以外にも他の活動に活かすために知識を蓄えるようになります。

また、長期間での建設的でクリエイティブな努力ができるようになり、戦略的に自己制御しながら問題解決ができるようになります。
ちなみに、専門家や同僚との協力で理解を深めるとさらに興味を満たすことにポジティブになります。

?どのフェーズでも他者との関わりが重要
他人からのサポートや他の人が頑張っている姿や他の人に負けたくないという気持ちが努力を続ける原動力になります。

?外側から生じた興味が個人の中に組み込まれる
最初は手品を見たときのような興味から始まります。しかし、徐々に知識が蓄えられ自分の中の価値観に基づいて興味が出てきます。この過程を経る事でタスクに関するモチベーションが本質的モチベーションへと変わります→(R)。

本質的モチベーションとは自分の興味や関心から来るモチベーションで創造性や生産性、集中力の向上につながります。

興味を引き出すサポートとは?

➡︎子供の好奇心を引き出すような質問をすることや相手の好奇心から出た質問を聞くこと、問題解決のためのリソースや戦略を提示することなどが含まれます。

?文脈化されたサポートがとても大事
選択肢を選ばせることで自主性が備わり、役立つ知識を提供して課題を解決すると自分の有能さを感じることができます→(R)。
また、前向きな感情が引き出されるためタスクへの集中力が高まります。

?「なぜ?」という問いが大事
なぜという質問をすると疑問を突き詰める習性がつくようになり、子供の興味が引き出されます。
また、タスクを与えるときも理由を一緒に伝えると興味が引き出されやすくなります。理由を知る事で自己制御するインセンティブにもなりタスクに集中して取り組めます→(R)。

学習意欲が高いとポジティブなフィードバックが起こる

➡︎学習意欲が高いと問題解決ができ、自分には課題を解決する能力があると認識するようになります。この認識がさらに学習意欲を高めポジティブなスパイラルが生まれます。

こうした現象を説明するのに自己効力感や本質的モチベーションという概念があります。
これらが高まると、少ないストレスで大きな成果を出すようになることが知られています。

また、人は成長できるというマインドを持つようになると他人を見下したり、何かのために人を犠牲にしにくくなるという効果も知られています。

まとめ

✔️今回の論文から外から来た興味に反応しているうちに内部からの興味が引き出されることが分かりました。
内部の興味に反応すると少ないストレスで努力できるようです。
そのためには他者のサポートが大切です。

?大人でも同じメカニズムで興味が引き出せます
このような興味のメカニズムは子供だけではなく、大人にも応用できます。
仕事に興味がなくても仕事の意味を教えたり、「なぜ?」という問いかけにより興味を引き出せます。
新しい知識やスキルを学ぶことで仕事が進むようになるとさらに勉強するようになります。

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