【人生で一番大切な能力】自制心を鍛える5つの方法
- 自制心を鍛えるメリットって何?
- なぜ自制できなくなるの?
- 自制心を鍛える方法が知りたい
ついつい感情的になってあとで後悔した、という経験はありませんか?自制心の高い人は物事を冷静に判断できたり効率的に問題を解決します。また、不安やストレスを抱えていても目標のために努力を続けることができ人間関係がこじれることもありません。こうした自制心を鍛えておくと人生で後悔することが格段に減ります。
この記事を読むことで自制心を鍛えるメリットや心理学に基づいた方法が分かります。
【人生で一番大切な能力】自制心を鍛える5つの方法
自制心を鍛える方法を紹介する前にまずは自制心によってどんなメリットが得られるのか紹介します。
こうしたメリットを知ることで自制心を鍛えるインセンティブになり、自制心を鍛えた時の効果も出やすくなります。
自制心によるメリット
自制心を鍛えることで
・嫌な仕事にも集中して取り組める
・節度のある振る舞いができる
・良い人間関係が築ける
・目標を達成しやすい
などのメリットがあります。
実際に自制心の大切さを明らかにした実験にマシュマロテストというものがあります。
実験内容
子供に好きなお菓子を選んでもらい20分食べずに我慢できたらもう一つお菓子をもらえるというテストです(お菓子はマシュマロである必要はありません)。
子供にテストの内容を理解させて部屋に一人残します。
自制心の低い子供は我慢できず食べてしまい、自制心の高い子供はお菓子を見ないようにしたり他のものに興味を反らすなどの工夫をして我慢します。
なぜ、このテストが重要なのかと言うと将来を多面的に予測できるからです。
4~5歳でマシュマロテストを行い我慢できた子とできなかった子でその後の人生を比較しました。その結果、わかったことを下記にまとめています。
我慢できた子は誘惑に負けにくく、集中力が高く、自力本願で自信に満ちていました。また、目的を達成する意欲も高く、注意深く、理性で物事を考えることが得意でした。学力についても我慢できなかった子と比べて点数が1割近く高くなっていることも分かっています。
我慢できた子は目標達成が得意で高い教育水準にあり、肥満の割合が大幅に低くなっていました。また、対人関係について適応力が高く、緊密な関係を保つのが上手になっていました。
このように自制心は長期に渡って多面的に人生に影響しているようです。自分の願う人生を手に入れたいのなら鍛えない手はないですよね。
自制心が高い人と低い人の違い
なぜ自制心が効く人と効かない人がいるのかについての研究は脳科学の分野でも行われています。
コロンビア大学の心理学者ウォルター・ミシェルのチームはfMRIを使って自制できる人とできない人との脳を比べました。fMRIは脳が活性化している場所を観察できる装置です。
その結果、我慢できる子は効果的な問題解決や想像的な思考、衝動的な行動のコントロールに使われる前頭前皮質の活動が盛んで、我慢できない子は欲求や快楽と結びついている腹側線条体の活動が活発になっていることが分かりました。
他にもスタンフォード大学のサミュエル・マクルーアの研究でも自制できる人は論理的思考を司る前頭前皮質が活性化しており、自制できない人は感情を司る扁桃体や大脳辺縁系が活性化していたことが分かっています。
このように自制できる人は論理的思考を司る領域を活性化させることで感情的にならずに行動できるようです。
つまり、自制心を鍛えるということは脳の活動をコントロールできるようになるということです。
では、どうすれば脳をコントロールできる様になるのでしょうか?
自制心を鍛える方法
自制心を鍛えるためには自制心を鍛える決心が必要です。
脳の働きを制御するためには強い意志と良い習慣を維持しなければなりません。自分は自制心を鍛えるんだ、という決心ができて下記の方法が有効になります。
- 自分を俯瞰してみる
- マインドフルネス
- 将来の自分を具体的にイメージする
- 心理的な距離
- 事前に行動を決めておく
自分を俯瞰してみる
自分を俯瞰して見ることで情動に動かされず、自制心が鍛えられます。
嫌なことがあっても俯瞰して見てみるとそこまで悪くない状況だった、ということはよくあります。
また、自分を俯瞰してみることで
・血圧が上がりにくくなる
・炎症が起こりにくくなる
という生理的な効果もあるようです。
心理的な効果だけでなく生理的な効果もあるというのはすごいですよね。
こうした自分を俯瞰するために壁に止まっているハエをイメージすると良いことが言われています。自分が壁に止まっているハエのように小さな存在だと認識することで感情的になるのを抑えることができます。
マインドフルネス
自制心を鍛えるためにマインドフルネスが有効ということも分かっています。マインドフルネスとは「今、この瞬間」に集中することを言います。
良く行われるのは瞑想です。
呼吸に集中することで過去でも未来でもない「今、この瞬間」に集中します。
これにより感情をつかさどる偏桃体の活動が弱くなり、論理的な思考を司る前頭前皮質が活性化します。何か自制心が乱されることがあったとしても偏桃体の活動を抑えるので理性的に対処できるようになります。
将来の自分を具体的にイメージする
将来の自分との結びつきが強くなれば自制心が働きやすいことが分かっています。
マシュマロテストで我慢できなかった子供のように大人でも目の前の利益を我慢できないことがあります。
例えば、健康に悪いと分かっていても寝る前にお菓子を食べてしまう、ついついお酒を飲みすぎてしまう、などです。
ニューヨーク大学のハーシュフィールドはfMRIを使い自分のことを考えた時や他人のことを考えた時、10年後の自分を想像した時の脳の活性化パターンを比較しました。
多くの人は10年後の自分に対し他人を思い浮かべた時のようなパターンを示し、将来の報酬よりも今の報酬を好む傾向がありました。
一方、10年後の自分に対し今の自分と同様のパターンを示した人は今の報酬よりも将来の報酬を好む度合いが強く資産の蓄積も多いという傾向がありました。
更に、この実験では将来の自分のアバターを作成し、将来の自分に対し具体的なイメージを持たせると30%貯金を増やそうとしたという結果も得られました。
このことから将来の自分に対し情動的な結びつきが強くなれば自制心が鍛えられ、目の前を報酬を我慢できるようになると考えられます。
17~72歳の人を対象にビジネスにおける嘘や賄賂をどこまで許容できるか質問しました。その結果、将来について考えさせたグループの方が許容できる範囲が少ないことが分かっています。
何か倫理的に問題のある決断をするときには将来に一旦集中すると言う方法で自制を効かせる事が出来るようです。
心理的な距離
心理的距離が遠い場合には情報が抽象的になり前脳前皮質が働き過ぎてしまう事が分かっています。
例えば、次のような例です。友人に誘われてイベントに参加する約束をしました。その時はイベントに興味があり、面白そうだと思っていましたが当日が近付いてくるに連れだんだんと行きたくなってきました。そして、断ることができないまま当日になってしまいました。
これは心理的距離が遠いことにより自分の感情を考慮できなくなっている例です。
こうした後悔をしないためにはその一言を具体的にイメージすると良いそうです。
何時に家を出てどの電車に乗るのか、何を持って行く必要がありどんな人が参加するのか。そういったことを想像することで当日の感情をシュミレーション出来ます。
どうしてもタバコやアルコールがやめられないという人はタバコによって肺がんになった人の写真をみたり、アルコールによって肝臓ガンになった人の写真をみることで辞めれる可能性が高まります。
この理由として病気になった時の感情をシュミレーションをする事が出来たことが考えられています。
このように心理的距離を近づけることで自制心が鍛えられ、自制の効いた判断ができるようになります。
事前に行動を決めておく
自制心を鍛えるために自分が自制心を乱した時のことをイメージしてその時の行動をあらかじめ決めておくという方法があります。
シェフィールド大学で行われた研究では事前に対処法を決めておくことでダイエットや運動習慣の目標を達成できるようになった、という報告がされています(R)。
例えば、部下の言い訳にイライラしたときはその場では何も言わず後で冷静に考える、残業が続いていたら部下に任せれないか検討する、など事前に決めた方法を機械的に行うようにします。
自制心が乱れそうなときは脳にも負担がかかっているので良いアイディアは出てきません。事前に決めておくことで適切な行動ができます。
では、私たちはどんな時に自制心を乱しやすくなるのでしょうか?
おまけとして自制心が乱れる原因についても紹介しておきます。これを知ることで自制心が乱れないよう対策が立てれるようになります。
自制心が乱れる原因
自制心が乱れる原因として下記の4つが知られています。
- ホットスポットを攻撃される
- 楽観的なバイアス
- 自制心の疲弊
- 育った環境
ホットスポットを攻撃される
普段は温厚な人でも料理の味付けにはうるさかったり、靴を汚されたときに異常に怒る、などその人特有の心を乱すポイントというのがありますよね。これをホットスポットと言います。
ニューイングランドで行われた実験では子供たちを観察することでそれぞれが異なるホットスポットを持っていることが確認されています。
田園地に7歳から17歳までの子供たちを集め6週間集団生活をしました。その結果、子供に注意されると反感を持つ子もいれば、なんとも思わない子もいたり、大人に注意されても反感を持つ子もいれば反発しない子もいることが分かりました。
この様なホットスポットができる理由として潜在的に自制しないと自分自身で決めていることが考えられています。そのため、他人から見ると一貫性を欠くような行動でも本人にとっては一貫性があります。
そのため、まずは自分がどんな時に自制心を保てなるか考えてみましょう。
食事の時間が遅くなったり、恋人との関係が悪くなった時にストレスを感じやすくなっているかもしれません。また、睡眠不足と仕事でのトラブルなど複数の要因でホットスポットが作られている可能性もあります。
楽観的バイアス
楽観的に考えるために自制が効かなくなるということも知られています。
これは楽観主義バイアスと言い物事を自分の都合のいいように考えてしまうことを言います。
実際にいくつかの実験でも人には楽観的バイアスが働きやすいことが確認されています。
少人数でのグループで自己紹介をした後に20分間自由に話してもらい、お互いに参加者の特徴を評価してもらいました。愛想のいい、人気がある、流暢に話す、ユーモラスである、明快にコミニケーションできるなどです。
この会話をマジックミラー越しに見ている観察者にも同じ評価をしてもらいました。
その結果、鬱の参加者は観察者の評価に近く、健常者の評価は観察者の評価よりも高くなっている事がわかりました。このように健常な人は自分たちの評価をポジティブに評価してしまう傾向があるようです。
楽観的に考えてしまうのを防ぐには失敗した時のことを具体的に考えるという方法があります。数ヶ月後に失敗した時のことを考えることでバイアスを軽減し自制心を鍛えることができます。
自制心の疲弊
自制心は筋肉のように使えば使っただけ疲弊していきます。
- 心身の耐久力の低下
- 論理的思考の低下
- 問題解決力の低下
- 情動抑止
フロリダ州立大学で行われた研究では自制することによって問題に粘り強く取り組めなくなることが分かっています。
67人の被験者を2つのグループに分け、片方にはクッキーを食べても良いと支持し、もう片方には目の前のクッキーは食べてはいけないと指示をし、さらにラディッシュだったら食べても良いと言う指示を出しました。
その後、この2つのグループに解けそうで解けない数学の問題を出し、問題を解こうとした回数を測定しました。
その結果、クッキーを食べた方は33回チャレンジしましたが、ラディッシュの方は19回しかチャレンジしませんでした。
このことからラディッシュ組はクッキーの誘惑に勝つために自制心を使っていたため、問題に全力で取り組めなかったと考えられます。
こうした自制心の疲弊に対してお金やお菓子のような褒美(インセンティブ)が有効という報告もあります。
文章に出てくる「e」を全て斜線するという単純な作業を5分行ってから「e」の後に母音が続いていたら消してはいけないという条件を与え作業をさせました。
その結果、インセンティブが与えられたグループの方が熱心に作業を続け、インセンティブが与えられなかったグループのパフォーマンスは低下していました。
このようにインセンティブによって自制心を長く保てるようになるようです。
また、自制心が使ったら消耗するものと思わず、使った分だけさらに鍛えられると信じたグループは自制心を維持する時間が長くなったという結果もあります。
ストレスの研究でもストレスを自分を成長させるものと捉える方がストレスを感じにくいという研究もあります。心の持ちようというのは思っているよりも大切みたいですね。
育った環境
自制心が乱れる原因として幼少期の経験も重要ということも分かっています。
生まれたばかりの赤ちゃんは自分が頼っている保育者によってほぼ完全にコントロールされています。この時期に赤ちゃんのストレスが慢性的に高くならないようにすることで安定したメンタルを手に入れることができます。
赤ちゃんが寝ている間でも親の怒っている言葉を聞くと脳のストレスが高まります。また、情動を制御する部分が活性され、感情を制御する機能が弱まるそうです。保育者はできるだけ赤ちゃんが苦悩の感覚に浸るのを辞めさせなければなりません。
また、子供が自分の興味に夢中になることで自制心が育まれることも分かっています。実際に支配的な母親の子供は誘惑に弱く我慢ができません。しかし、支配的でない母親の子供は誘惑に強く我慢ができます。
このことから子供の頃に不安を感じることが少なく、自主性を尊重してくれる環境で育つと自制心が高くなることが分かります。
まとめ
今回は自制心にどのような効果があり、どうしたら自制心を鍛えれるのか紹介しました。
どうやら、自分を客観的に見ることで自制心が維持できるようです。
今回紹介した方法により、自制心が鍛えられ次第に意識しなくても自制心を維持できるようになります。
ついつい感情的になってお酒を飲みすぎたり、部下や同僚につらく当たってしまうという方は試してみてください。
こうした、自制心と同じような概念に感情的知性というものもあります。自制心は自分の感情のコントロールですが、感情的知性は他人の感情のコントロールも含まれます。ぜひ、参考にしてみてください。
参考文献
・マシュマロ・テスト:成功する子・しない子
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