お金との正しい付き合い方。お金に支配されないための3つの真実。

お金との正しい付き合い方。お金に支配されないための3つの真実。
この記事の対象者
  • お金と上手く付き合っていきたい
  • お金が自分を幸せにしてくれるのか疑問に感じている
  • 貧乏のデメリットについて知りたい

生きていく上でお金は重要です。しかし、お金との付き合い方を間違ってしまうと麻薬のように中毒になり幸福にはなれません。では、お金と正しく付き合っていくためにはどうすれば良いのでしょうか?今回はMIND OVER MONEY―――193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実を参考にどうすればお金をうまく利用できるのか紹介して行きます。

この記事を読むことでお金に対して正しい認識が持てるようになります。

お金との正しい付き合い方。お金に支配されないための3つの真実。

今回紹介する内容はMIND OVER MONEY―――193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実で興味深かった3つの項目についてです。この3つは個人的に参考になったもので、他の項目についても面白かったので興味のある人は読んで見てください。お金に支配されないためにお金に人間がどのように反応するのかをまとめた良い本でした。では、私の興味を持った3つの内容について紹介していきます。

  • お金でやる気を引き出せるとは限らない
  • お金では幸せになれない
  • 貧困は差別の原因となり個人の能力を制限する

お金でやる気は引き出せるとは限らない

おそらく、多くの人は高い給料を払えば従業員が一生懸命働くようになったり、お金を渡せば子供が勉強するようになる、と考えているでしょう。しかし、高い給料はインセンティブとして本当に効果があるのでしょうか?

ハーバード大学の経済学者、ローランド・フライヤーは成績が良かった子供に対してお金を渡すという実験を行いました(R)。もちろん、倫理的な問題があり当時は脅迫文が送られてくるなど大きな問題になったようです。それはよいとして、この実験の結果は成績が上がった子供もいれば変わらない子供もいた、という結果でした。なぜ、このような違いが出たのでしょうか?この実験を詳しく見てみると成績が上がった子供にはやるべき課題が明確だった、という共通点があることがわかりました。読解力を上げるために本を読めばお金がもらえる、というシステムの場合は成績が上がり、単に成績をあげればお金を上げるというシステムの場合は成績が上がっていませんでした。
また、成績を上げればお金がもらえるというシステムだった子供に「どうしたら成績が上がると思う?」と質問しても答えが返ってきませんでした。このことから、お金だけではダメで明確な課題がなければお金がインセンティブにならないことが分かります。また、別の実験でお金によるインセンティブの効果は罰則を儲けるよりも効果があることも分かっています(R)。どうやらお金をインセンティブとして使うのは正解のようですね。

別の例として、お金はコカインの中毒から立ち直るインセンティブとしても役立つ、ということが分かっています。コカインを使用しないことでお金がもらえる、というシステムなのですが金額は大したことがなく、お金の量はあまり関係なかったみたいです。また、お金そのものよりもお金をもらうことで達成感を味わえることが影響していることも分かっています。さらに、このように苦労して手に入れたお金はその人にとっての価値が高く、コカインのような自分をダメにするものではなく、自分にプラスになるものに利用する確率が高くなっていた、という結果も報告されています。コカインでなくてもアルコールやタバコなんかを辞めたいと思っている人は禁止した日数が増えていくごとに自分へご褒美を与えると効果がありそうですね。

お金をインセンティブにしてやる気が引き出せる、という例を紹介してきました。しかし、お金をインセンティブにすると逆効果になる場合があることも分かっています。それは下記の3つの場合です。

お金がインセンティブにならない場合
  • 課題そのものが楽しい場合
  • インセンティブが大きすぎる
  • 課題が利他的なものである場合

課題そのものが楽しい場合

カーネギー・メロン大学では学生たちを集めて毎週決まった日に雑誌のタイトルを決めるという課題を与えて実験を行いました。お金のインセンティブがあるグループは課題を楽しめず、タイトルを思いつくのにかかる時間も改善されて行きませんでした。一方、お金のインセンティブがないグループは課題を楽しみ、タイトルを思いつくのにかかる時間は半分に短縮されました。

さらに、心理学者のエドワード・デシは学生たちにブロックのパズルを使い、指定された形になるように組み合わせるという課題を与え、お金によるインセンティブの効果を確認しました(R)。その結果、インセンティブのないグループの学生は休憩時間もブロックで遊んでいるのに対し、インセンティブがあるグループは時間が来るとすぐにブロックから手を離していました。もちろん、インセンティブのないグループの方が成績がよくなっています。
さらに、お金ではなく「すごい成績だ」と褒めてもらったグループはインセンティブがないグループよりもさらに成績がよくなっていた、という結果も出ています。このことから、課題自体が楽しい場合はお金ではなく、褒める行為の方が相手のモチベーションを高めていることが分かります。

こうした動機付けは外発的動機付けや内発的動機付けとして知られています。お金によるモチベーションの増加を外発的動機付けといい、自分の興味関心によるモチベーションの増加を内発的動機付けといいます。外発的動機付けは自分の外からの影響を受けているため、持続しにくくストレスが溜まりやすいことが分かっています。そのため、一般的には内発的動機付けを行うことが正しいとされています。過去の記事でこうした動機付けの理論を詳しく解説しているので興味のある人は下記の記事を参考にしてください。

インセンティブが大きすぎる

これはイメージしやすいですよね。100万円がかかったチャレンジで失敗してしまうなどテレビで良くやっていますよね。サッカーのPKでも大抵は決めれるのに決めれない人がいる、というのもインセンティブが大きくて負荷がかかっている証拠です。科学的にもインセンティブが大きすぎると脳の線条体にドーパミンが過剰摂取の状態を引き起こし集中できにくくなることが知られています。

課題が利他的なものである場合

課題が倫理的に良いことと判断されるような場合、お金によるインセンティブは逆効果になります。

この現象を説明するのにスイスの例が参考になります。スイスのとある町では放射性廃棄物の貯蔵庫の受け入れについて質問された時、住民の半数が賛成と答えていました。しかし、政府が地域のためにと一人当たり2000から6000ドルの補償金を支払うと言った途端に賛成の人数が4分の1までに減少しました。この現象について心理学者たちは利他的な感情がお金によって頭の中から押し出されたからだと考えました。自分の地域で放射性廃棄物を受け入れることで他の地域が危険を回避できるという思いやりがお金によって自分の損得に置き換わってしまったということです。

これに似た事例としてこんなのも紹介されています。共働きの親は保育園に決められた時間までに子供を迎えに行かなくてはなりません。しかし、仕事の都合で時間に遅れる親も多くいました。保育園はこの親に対してお金を要求していなかったのですが、職員まで帰るのが遅くなるため遅れた時間に対してお金を要求することにしました。その結果、どうなったかは想像できますよね。今までよりももっと迎えに来るのが遅くなりました。なぜなら、今までは保育園の善意で子供を預かってもらっていたのに、お金が発生した途端に善意ではなく職員の仕事になったので親たちは預かって当然と考えるようになったからです。これも相手への思いやりが相手との損得に置き換わった例です。

課題が利他的なものである場合にお金をインセンティブにしてはいけない、というのは面白いですよね。たまに、有名人の人が多額の寄付なんかをしていますが、お金に変えられないぐらい他人の役に立ちたいという気持ちがあるのでしょうね。ちなみに、この本の中には何か計算をするよりも素直にお金を貸してください、と行った方が相手がお金を貸してくれる可能性が高くなっていた、ということも書かれていました。何か腹のなかで企んでいる人には貸したいと思わないですもんね。それよりか、相手の他人の役に立ちたい、という気持ちに訴えた方が成功します。

このようにお金とやる気には少し複雑な関係があるようです。家族や友人に対してお金を渡すと思いやりではなくビジネスになってしまい、関係が悪化する可能性があるので気をつけましょう。

お金は人生を幸せしてくれない

多くの人はお金があれば幸せになれると考えています。しかし、実際にお金がある人は幸せになっているのでしょうか?

1978年に22人の宝くじ当選者、22人の幸福でも不幸でもない人を対象に人生の幸福度を調査した結果があります。この結果では宝くじに当選した人は一時的に幸福度は高まるのですが、1年で他の人と同じぐらいの幸福度まで低下していることが分かりました。
このことから、宝くじに当選して日々の生活が豊かになっても徐々に慣れて来ることが考えられています。お金を使うことに慣れて贅沢をしても幸福感を感じにくくなっているようです。また、宝くじに当選したことで夫婦の仲が悪くなったり、強盗に襲われた、という被害も出て来るようです。

他にも、コロンビア大学で行われた研究ではお金が幸福感に与える影響は4分の1しかない、という調査結果も出ています(R)。お金だけでなく友人や恋人との関係が幸福感には影響するようです。
お金で物を買うことは出来ますが、最終的な目標のために物が必要という人と、最終的な目標が物そのものの人では前者の方が幸福感が高まりやすく、最終的な目標を物にしている人は寂しさを感じやすく、「これが手に入ったら幸せになれる」と勘違いをしてありもしない幸福を追い求めてしまうようです。

ただ、お金がなければ幸せになれない、というのも事実です。全くお金がないと住む所も食べる物もなくて惨めな思いをすることになります。このことから、本当にお金がないときにはお金があることで幸福感が急激に上昇するのですが、一定のお金を持つようになると幸福感が高まりにくくなってくることが考えられています。

貧困は差別の原因となり個人の能力を制限する

お金がもたらす幸福には限度がある、ということを紹介してきました。しかし、だからと言ってお金が必要ない、ということではありません。貧困に陥っていると様々な悪影響が発生します。

貧しいと嫌われやすい

人が人を見ている時には見ているものを人と認識し、脳の前頭前皮質内側部が活性化することが知られています。しかし、ズタボロのホームレスの写真を見たときには前頭前皮質内側部は活性化せずに嫌悪感を司る領域が活性化しています。

人を人として見ていない、というのは衝撃的な結果ですよね。しかし、多くの人はホームレスを見て仲良くなりたいと思わないはずです。できれば関わりたくない、と思っている人がほとんどでしょう。このような心理からも貧乏な人は軽蔑されやすいことがわかります。

このような結果がでた原因の1つとして貧困は本人のせいと思っている人が多いことが挙げられています。イギリスで行われた調査によると69%の人が「人生で成功するための機会は十分にあり、あとは本人の問題だ」と答えていることが分かっています。

また、別の調査では貧しい人に対して不潔、怠惰、無気力、低能と判断する人が多く、医学生が貧困の人と関わる時間が長いとよりネガティブな感情を抱くようになることが分かっています。このように私たちは無意識のうちに貧しい人たちのことを差別してしまっているようです。

貧困が知能指数を下げる

貧しい人は脳の機能を十分に発揮できていないことも分かっています。センディル・ムッライナタンが行った研究では、お金の心配をしている人は脳内の帯域幅が狭くなり集中力が低下し、徹夜したように思考が鈍っていることが知られています。また、センディル・ムッライナタンはサトウキビ農家を対象に刈り入れ前と後で知能指数にどのような変化があるのか調査しています。刈り入れ前は前年の売り上げがなくなりお金が心配になる時期として知られています。一方、刈り入れ後は売り上げが立ってくるのでお金の心配がなくなる時期として知られています。この調査の結果、刈り入れ後の方が知能指数が10ポイント近く点が上がっていたことが分かっています。この10ポイントというのは大きな数字らしいです。

また、車の修理代として150ドルを請求された人と1500ドルを請求された人に論理的思考力や問題解決能力を測定するテストを受けてもらったところ、1500ドルを請求された方がスコアが低くなったという結果も出ています。この修理代金は仮想の修理代だったにもかかわらす被験者の思考力を低下させていました。このように貧困により無意識化でもお金の心配がプレッシャーとなり本来の能力が発揮できません。

また、貧困は子供の脳の発達にも影響を与えている恐れがあります。アメリカのセントルイスで行われた研究によると貧困の子供は脳の白質も灰白質も容量が小さく、海馬と扁桃体のサイズも小さくなっていることが分かっています。これらは論理的に思考したり、感情を制御したり、記憶力に関わる領域です。貧困が脳の発達を妨害し、子供を貧困から抜け出しにくくしている可能性があります。

まとめ

今回はお金とどのように付き合っていけばいいのか、ということについて科学的な文献を参考に紹介しました。

究極の目的は幸せになることであってお金を貯めることではありません。お金を道具として上手く利用することで幸せに近づけます。幸せになるための方法としては以前の記事にかなりの量をまとめているので下記の記事を参考にしてもらえればと思います。

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