不利な立場の集団心理

不利な立場の集団心理

お金持ちになりたい、社会的地位のある立場にたちたいと思っていませんか?
➡︎人には自分よりも集団やシステムを優先する傾向があるようです。

その理由として今の自分の立場を正当化しようとする心理やシステムのために自己犠牲的になってしまう心理が働くからです。今回はそういった集団における心理について紹介していきます。

不利な立場の集団心理

この記事は2004年にJohn T. Jost よって発表されたレビューに基づいています。

著者は政治心理学についての研究を行なっており、集団の中でどのような心理が働くかについて研究しています。

興味深いのはグループ正当化理論とシステム正当化理論です。

グループ正当化理論とは?

➡︎グループが自分たちの利害を正当化するイデオロギーを作り出すという理論です。

グループは自分たちのメンバーを強く好み、グループ以外に対して偏見や敵対心があります。
例えば適当に集められて集団の中で似た者同士が仲良くなったり、共用スペースを利用している時に別のグループに対して敵対心を抱きやすい、などです。

こうした偏見はグループを確固たるものにし、利害やアイデンティティを正当化するための民族的なモチベーションによって引き起こされるとされています。

システム正当化理論とは?

➡︎個人やグループを犠牲にしても社会的な仕組みを維持しようとするという理論です。

例えば会社のために無理な残業をして体調を壊してしまう、不正が行われている会社の内部告発をして社会に貢献する、などです。

進化の過程で集団のために自分を犠牲にする性質が生き残りに有利だったという考察もあります。

集団心理学で立証されている仮説

上記の概念に対して著者は20個の仮説を立て、それを立証する論文について紹介しています。

?仮説1;今の現状に対して満足していなくても好ましいと判断してしまいがち。

➡︎ブッシュが大統領に選ばれるときに可能性が高まるにつれて支持者も多くなっていった→(R)。

?仮説2;グループの違い(学歴や住んでいる地域など)によって社会的、経済的地位の違いを説明しようとするみ。

➡︎社会的地位の低い人はそれが変わらないものだとして自分を納得させていた→(B)。

?仮説3;格差を納得させるために固定概念を使い社会システムが揺らぐことから守ろうとする。

➡︎不利な立場の人は田舎者だから〜、女だから〜という理由を使って不平等なことにもポジティブに反応するようです。

?仮説4;不利な立場の人達は実際よりも自分の無力さの説明が正当であると誤解している。

➡︎性差別がある理由を提示した時に男女平等の意識が減少しやすかった→(R)。

?仮説5;システムの正当性への認識や保守的な政策が増すにつれて高い地位のグループは自分たちに好意を抱く。地位の低いグループは地位の高いグループに好意を抱く。

➡︎システムを正当化した方が不安や罪悪感、不確実性が減り好ましいと感じている→(R)。

?仮説6;不利な立場の人は平等な環境にあっても有利な立場のメンバーに勝てないと思ってしまう。

➡︎女性の方が難しい仕事をしていても賃金が低いことを正当化している→(R)。

?仮説7;不利な立場の人は未来の仕事への心配よりも過去の仕事に対しての後悔が大きい。

➡︎女性の方が過去の仕事に対して後悔している→(R)。

?仮説8;システムの正当性が増すにつれて地位の低い人たちはグループ外へのポジティブな感情が増える。高い地位の人たちはグループ内へのポジティブな感情が増える。

➡︎経済的な平等が増すにつれ、地位の高い人たちはグループ内へのポジティブな感情が増え、地位の低い人たちはグループ外へのポジティブな感情が増えていた→(R

?仮説9;システムの正当性は有利な立場の自尊心を高め、落胆や神経症的性向を減らす。一方、不利な立場の自尊心を低下させ、落胆や神経症的性向を高める。※神経症的性向とはすぐに不安になったり、心配する性格のこと→(R)。

?仮説10;個人やグループのニーズや利害が低いとき、不利な立場のグループは社会システムや権力に対して強いサポートを提供する。

➡︎不利な立場のグループは自分がもっと悪い状況になることを強く恐るため、社会システムをサポートするようになる→(R

?仮説11;社会システムの正当性は格差のある社会の方が高い。

➡︎19カ国を調査した結果、女性の教育や平均寿命、女性の社会進出が進んでいるほど性差別が強かった→(R

?仮説12;性別に対しての固定概念を補完することは社会の正当性を高める。

➡︎性的固定概念への配慮や優しさにより平等や正当性を感じやすくなっていた→(B)。

まとめ

✔️このレビューから有利な立場にある人は集団心理学的にも有利な立場にいることが分かります。

?有利な立場とは
・男性
・お金がある
・都市に住んでいる
・地位が高い
場合に有利な立場と言えるでしょう。

有利な立場にいて真っ当な仕事をすれば自尊心が高まり、不利な立場の人からも尊敬されます。未来思考になり、落胆することも減るので自己効力感も高まると考えられます。

☑️不利な立場の人は現状を正当化しやすい
このレビューでは「低所得者の方が収入の格差が正当で必要だと信じている。」というものがありました。
格差は一生懸命働くためのインセンティブのために必要だという理論を低所得者の方が支持しているようです。これでは立場の入れ代わりは起きにくくなってしまいます。

☑️性別における不平等を合理化するイデオロギーが大切
女性が損をするのはしょうがないので損した分を補完する仕組みを作って行こうという考えです。

男女平等を訴えていても同じ仕事を望む、ということでは無くて女性が損をしてしまうことへの配慮が大事だと思います。

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