【徹底解説】自信過剰バイアスとは?自分に自信がある人ほど間違った判断をする理由

自信過剰な人が陥りやすい思い込み
この記事はこんな悩みを解決します
  • 自信過剰になってないか心配
  • 自信過剰の悪影響が知りたい
  • 自信過剰にならない方法が知りたい

自信過剰な人は無謀なことに挑戦して失敗してしまう可能性が高いです。また、失敗しても他人のせいにして自分の失敗だとは認めません。なぜ、自信過剰な人はこうした間違った判断をしてしまうのでしょうか?今回は自信過剰な人が間違った判断をしてしまう理由について紹介していきます。自信過剰でない人にとっても参考になるバイアスがいくつかあるので参考にしてください。

この記事を読む事で正しく判断するための方法がわかります。

【徹底解説】自信過剰バイアスとは?自分に自信がある人ほど間違った判断をする理由

自信過剰な人が間違った判断をする原因はバイアスにあります。自分に都合の良い情報ばかりを集めるので客観的な判断ができません。

バイアスによる間違った判断をしていると適切な難易度の課題に取り組めないので結果が残せないですし、スキルも上がっていきません。

では、自信過剰な人はどの様なバイアスに陥っているのでしょうか?

自信過剰な人が陥るバイアス
  • 後知恵バイアス
  • 妥当性の錯覚
  • スキルの錯覚
  • 確証バイアス

後知恵バイアス

人は過去に持っていた自分の意見を正確に再構築できないことが知られています。

例えば、手術をして予想外の事故が起きてしまった場合、患者や親族は手術自体が説明されたものよりはリスクの高いものだったと考えてしまう、などです。

自信過剰な人は自分の判断が間違っていたとしてもそれを認めようとはしません。常に他人のせいで失敗したと認識し他人を追い込みます。一方で、成功した時には自分のおかげと判断するので自信を強めていきます。

また、被害が大きくなるに連れ、後知恵バイアスも大きくなる傾向があることも分かっています。

例えば東日本大震災の被害に対して予測できる被害だった、対策を取ることを怠っていた、と判断するなどです。被害が大きいほど自分に原因があるとは思いたくないですもんね。

だた、後知恵バイアスにはメリットもあります。自信を持っていた方が未来をある程度予測できると錯覚できるので、将来の不安から自分を守ることができます。

妥当性の錯覚

私たちは自分の知っていることだけで論理を立て妥当性を判断します。しかし、実際には自分の知っていることは全体の一部なので立てた論理が根拠の薄いものであることに気づけません。

例えば、いわゆるガラケーに今までになかった素晴らしい機能を追加したとします。しかし、iPhoneのようなスマートフォンが登場することを知らなかったために新たなガラケーを出しても全く売れない、という事が起こります。

自信過剰な人ほどこの傾向が強く、自分の頭の中だけで作ったストーリーに過剰な自信を持ってしまいます。

代表性ヒューリスティック

代表性ヒューリスティックとは代表的な例を過大評価して意思決定することを言います。自信過剰な人ほど代表的な例を思い浮かべやすいのでヒューリスティックバイアスがかかりやすくなります。

代表性ヒューリスティックの特徴
  • 統計学を専門にしていても陥りやすい
  • 一般的な基準を無視してしまう
  • 当たっていることもある

例えば電車で読書をしている人を見かけた時に「この人は博士号を持っている」と「大学を出ていない」のどちらを選びますか?と聞かれた時、直感で考えてしまうと本を読んでいるというだけで「博士号を持っている」を選んでしまいます。
しかし、博士号を取っている人は一般の人の中の一握りなので間違いの可能性が高いということが分かります。

他にも2つ例を紹介します。

例1)芸能人や政治家の浮気やスキャンダルは報道されやすいため、どのぐらいの件数か予想する時に数を多めに見積もってしまう。
例2)Aさんが指揮する直近の3つのプロジェクトがうまくいったために次のプロジェクトも上手くいくように思える。

このように私たちは代表的な出来事にひきづられるようです。

思い出しやすいとバイアスが働く

思い出しやすい事でバイアスが働きやすくなる事が分かっています。
例えば、参加者に質問に下記の質問をします。
1、最近どのぐらい幸せですか?
2、先月何回デートしましたか?

この結果では1と2の質問の相関はほとんどゼロでした。デートした回数が多いほど幸せということにはなりませんでした。
しかし、もう一度順番を変えて下記の質問に答えてもらいました。
1、先月何回デートしましたか?
2、最近どのぐらい幸せですか?

2回目の結果では1と2の質問の相関がとても高くなりました。
この原因として2回目の実験では最近どのぐらい幸せですか?という質問を知らず知らずのうちに先月何回デートしましたか?に置き換えて答えてしまったと考えられます。
1回目の実験では幸せについていろんな指標を元に答えていたものが2回目の実験ではデートの回数だけが指標となってしまいました。

自信過剰な人は都合のいい事実に飛びつきやすいのでこうしたバイアスにかかってしまいます。

思いつく数でもバイアスがかかる

思いつく数でもバイアスがかかる事が分かっています。
例えば、被験者に2つの質問をします。
・何か強く自己主張した例を書いてください
・自分がどの程度自己主張が強いか評価してください

この試験をする際に自己主張した例を6個書くグループと12個書くグループを2つに分けました。すると、12個書くよう支持した方が自己主張が強くないと評価しました。
この結果を考える上で重要なことは数と思い出しやすさです。
多くの人は自己主張した例を12個思い出すのは簡単ではありません。そのため、被験者は「なかなか思い出せないってことは自分は自己主張が強くないのではないか?」と考えるようになり、自己主張が強くないと判断しました。
このように思いつく数というのも判断に影響を与えるということが分かります。

スキルの錯覚

複雑なスキルを使っている人ほど自分の能力に自信過剰になる事が分かっています。

ノーベル経済学者のダニエル・カーネマンは投資アドバイザーを対象にスキルと成果の相関があるのか調べました。その結果、スキルと成果に全く相関がない事がわかりました。それにも関わらず、投資アドバイザーはその事実を重要視しようとはしませんでした。

投資アドバイザーはバランスシートやチャート、様々なインジケーターを使って判断を下すため、自分たちが高度な情報をもとに推測を行なっているという自負を持っています。
そのため、この事実を認めようとしなかったと考えられます。

専門家の意見よりもアルゴリズムが優れている

アメリカの心理学者ポール・ミールは専門家の意見と統計的なデータのどちらが正しいかを検証しました。
・がん患者の生存年数や心臓疾患の診断
・銀行の信用リスク評価
・労働者の将来的な職業満足度
・ワインの将来の価格
など幅広い分野のどれでも統計的なデータが専門家の意見よりも優れていたという結果が出ています。
こうした結果が出る理由として、専門家が様々な要素を複雑に取り組んで予測しようとするために一貫性を欠いてしまう、という理由が考えられています。いかにその要因が決定的だとしても、ほとんど起きることはない時は計算式に組み込む必要はないのですが、関係のない要因を組み込んで主観で予測してしまいます。そのために計算式に劣る結果を出してしまいます。

平均への回帰

平均への回帰とは何かの事象が平均へ戻ることを考慮してないことによるバイアスのことを言います。自信過剰な人ほど平均への回帰を無視してしまいます。

平均への回帰の特徴
  • 平均を無視してしまう
  • 変化を与えた事象を過大評価してしまう

例えば、仕事で部下を叱った後にその部下が成果を出した、という場合、自分が叱った事が部下の成果につながったと考えてしまいます。しかし、もともと部下に能力がある場合、その部下の本来の能力を発揮しただけで叱った効果はなかったかもしれません。

このように平均を考慮していないため間違った分析をしてしまいます。この認識のせいで上司は今後も部下を叱り続ける可能性が高くなります。

他にも2つ例を紹介します
例1)褒めた途端に失敗する
例2)短期間の変化に一喜一憂する
これらは平均への回帰を考慮していないために起こります。

確証バイアス

確証バイアスとは自分に都合のいい情報しか信じない、という現象のことを言います。このバイアスがあるために自分が信じていることに関連する選択肢・情報を過大評価します。当然、自信過剰な人ほどこのバイアスがかかりやすくなります。

例えば、
・自然災害が起こる可能性が高くても自分には当てはまらないと考えてしまう
・成功している人を見て自分も成功できると思い込む
などです。

さらに、もっともらしい説明と一緒に情報を得た時には確証バイアスが強まります。論理的で再現性がありそうな論理を聞いたとしても確証バイアスによって正しく判断できていないだけかもしれません。

情報が加わることで尤もらしさが高まる

4面が赤で2面が青のサイコロを6回投げます。
直感的に3つの中から最も起こりそうな番号を選んでください

1.赤赤青赤赤

2.青赤赤赤青赤

3.赤赤青赤赤赤

3番を選んでしまいませんか?赤の面積のほうが多いので赤が多い選択肢を選んでしまいますが、間違いです。
正解は1番です。1番は投げる回数が少ないので3番よりも可能性が高くなります。

このように尤もらしい余計な情報にひきづられて誤った選択をしてしまう事があります。

トランザクティブメモリーにもバイアスがかかる

トランザクティブメモリーとは必要な情報を誰が持っているかについての記憶のことを言います。スイスのバーゼル大学病院で行われた実験では確証バイアスによって重要な情報を持っている人を決めつけてしまい正確に診断ができなくなった、という事が分かっています(R)。この研究では看護師が持っている情報を軽視してしまい正確な診断ができませんでした。

確証バイアスによって情報源が信頼されなくなったり、過度に信頼される様になる、ということですね。

鮮明な情報によるバイアス

同じ情報でも鮮明な情報だとバイアスが生じやすいということが分かっています。医者に対して次の2つの言い方で患者が隊員してもいいか判断してもらいました。
1、この症状の患者は退院後に暴力行為をする確率が10%です。
2、この症状の患者は100人に10人が退院後に暴力行為を行います。
精神科医にこの2つのどちらかを与えたところ2番の情報の場合には退院を却下する可能性が2倍になりました。

どうやら、具体的なイメージが湧くというのもバイアスの原因になるようです。

自信過剰にならない方法

自信過剰によって正しい判断ができなくなっている、ということを紹介しました。判断を間違うので結果も出にくくなります。自信過剰にならず、常にバイアスがかかっていないかと自分に問いかけることが重要みたいですね。

ハーバード・ビジネス・スクールで行われた研究では自信過剰にならず、自分の意見を変えることで相手に良い印象を与える事が分かっています(R)。

意見を変えると評価が高まる

スタートアップの経営者を集め経営戦略に明らかな矛盾があることを指摘します。その際に意見を変えた経営者は約24%しかいませんでした。
しかし、それを見ていた投資家は意見を変えた経営者を高く評価する可能性が5.8倍高まっていました。
この理由として意見を変えたほうが知的に見えるから、ということも分かっています。

ただ、意見を変えないことで自信があるように見えるという効果もあるようです。
そのため、技術者のような知的な仕事をする人には意見を変える事で約74%の人に支持されるのですが、演説家のような人は自信がある事が重要な仕事の人が意見を変えると約49%の人にしか評価してもらえなかったという結果が出ています。

こうした自信過剰による悪影響を受けないための方法を3つ紹介します。

自信過剰にならない方法
  • 基準率と代表性を考える
  • マインドレスで考える
  • いろんな人から情報を聞く

基準率と代表性を考える

基準率とは特殊な条件をつけないグループがもつ確率のことを言います。
例えばくじ引きのようなもので10個中3個があたりであれば基準率は30%となります。

代表性とはある母集団の中で特定の情報を聞いた時に想像できる代表的なものをいます。
例えば学校の中で控えめで他人と関わるのが苦手で小さなことが気になってしまう人、という情報を聞くと誰かが頭の中に浮かんでくると思います。

まずはデータが基準率なのか代表性を持っているか考えましょう。代表性が高い場合にはバイアスがかかってしまいます。

統計的基準率と因果的基準率

基準率には統計的基準率と因果的基準率があります。

統計的基準率とは母集団に関する統計的な基準のことです。
例えばサイコロの目がそれぞれ6分の1で出るなどです。

因果的基準率とは個々の予測を変える効果のある基準のことです。
例えば、事故が起こった時に事故を起こす車の70%が軽自動車だ、という基準があれば事故の原因が軽自動車によるものである可能性が高いと判断できます。

統計的基準は無視される傾向が強く、因果的基準は個々の情報として扱われ予測に大きな影響を与えることが多いという特徴があります。

直感的なバイアスを防ぐためには統計的基準率(平均への回帰)にアンカリングし、そこから因果的基準率を考慮して判断すると良いとされています。

マインドレスで考える

マインドレスとは集中していない状態のことを言います。
しかし、ただ何も考えていない訳ではなく脳の様々な場所が活性化された状態のことを言います。

散歩をしている時や風呂に入っている時に画期的なアイディアを思いつく、なんて経験はありませんか?これがマインドレスの効果です。

今後の会社の業績やこの仕事を続けて幸せになれるか、など複雑で論理的に考えても結論が出ない事があります。結論が出せてもバイアスがかかった不合理な判断になってしまいます。

そういった場合には一旦間をあけて何も考えないようにすると良いアイディアが浮かびます。マインドレスの効果については下記の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

オープンな場で議論する

確証バイアスによって情報源にもバイアスが働いている、ということを紹介しました。このバーゼル病院大学の研究では医者だけではなく看護師も参加できるような会議にすることで正解に近づける可能性が高まっていました。

また、オープンな場で推論を明確にする事も効果的です。専門家ばかりを集め暗黙の了解で推論をしているほど間違った結論を出す可能性が高ります。

ちなみに、こうした方法を取るためにも心理的な安全を守り、変なことを言ったからといって非難されない環境が重要、という考察もされています。

麻酔医のバージニア・アプガーは自信過剰バイアスの対策としてチェックリストを用いる事を推奨しています。ルール化する事で正しい決断ができ、主観を排除できるとしています。

例えば下記のようなルールを作ります。

  1. 評価に必要な要素を集める
  2. その要素を測定するための方法をリスト化する
  3. 適切な重みをつけるなど採点方法を考える
  4. 機械的に採点し総合ポイントが高い物を選ぶ

こうした機械的な採点方法を用いればバイアスから逃れる可能性が高くなるということですね。

まとめ

今回は自信過剰な人が陥りやすいバイアスについて紹介しました。

自分の都合のいいように解釈していないか確認しましょう。第三者の視点に立って自分を見つめ直すだけでも効果があるようです。

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