一流になるための成長の方程式

一流になるための成長の方程式

スポーツでも学問でも一流と言われる人と一般の人では何が違うのでしょうか?どうすれば自分のポテンシャルを発揮し成長できるのでしょうか?練習を一生懸命頑張ることばかりに気が行きますが、休息も同じぐらい重要です。成長を促す要因を把握し何に気をつけて日々を過ごせばいいのか書いていきます。

一流になるための成長の方程式

この記事はマッキンゼーのブラッド・スタルバーグによって書かれたPEAK PERFORMANCE 最強の成長術 を参考に書いています。

この本によると成長には次の方程式があるとしています。

負荷+休息=成長

これは体の筋力だけでなく、知力や精神力の成長にも当てはまるとされています。

著者は実際にアスリートや企業で一流と言われている人たちを調査してこの方程式に辿り着いたとしています。

例えばディーナ・カスターと言うマラソン選手はオリンピックの女子マラソンで銅メダルを取り、国際的な大会でも優秀な成績を収めています。さらに、この選手は42歳になっても20代の選手と渡り合っていたと言います。

この選手は高地で39キロのマラソンを走り、時速19キロで3キロコースを4セット走るなど凄まじいトレーニングをしています。

しかし、カスター選手によると自分がいい成績を収めているのは休息があるからです。毎晩、10〜12時間の睡眠をとり、食事やストレッチ、週に1回のマッサージなど休息の重要さを理解していました。

心理学者のチクセントミハイ氏によれば独創的な発明や斬新なアーティスト、ノーベル賞を受賞した科学者など様々な分野で成功した人たちには次の共通するプロセスがあったとしています。

  1. 没頭;高い集中力を持って仕事に集中する
  2. 熟成;疲労を回復し、仕事のことを一切考えない
  3. 閃き;新しいアイディアが湧いたり考えが深まる

このプロセスが様々な分野で共通している理由として、体と心が繋がっていることが考えられています。

例えばロイ・バイマスターによって行われた次のような研究があります。67人の大人を集め2つのグループに分けた。片方にはクッキーを食べても良いと支持し、もう片方にはクッキーは食べてはいけないと指示をし、さらにラディッシュだったら食べても良いと言う指示を出した。さらに、この2つのグループに解けそうで解けない問題を出し、問題を解こうとした回数を測定した。

その結果、クッキーを食べた方は33回チャレンジしたが、ラディッシュの方は19回しかチャレンジしなかった。

このことからラディッシュ組はクッキーの誘惑に勝つために意志力を使っていたため、問題に全力で取り組めなかったと考えられます。

こうした結果は別の実験でも確認されており、意志力を使って精神的に疲れていると集中力や思考を司る前頭前野が活性化しにくくなることがfMRIによって確認されています。(fMRIとは脳のどこが活性化しているか測定する装置)

このようにどのような分野でも「負荷+休息=成長」の方程式が成り立ちます。

没頭する

没頭して自分に負荷をかけるには3つのポイントがあります。

  • シングルタスク
  • マインドセット
  • 無駄なものをなくす

シングルタスク化する

マルチタスクをしていると効率よく仕事を終わらせているような気分になります。しかし、科学的に99%の人が生産性や仕事の質を低下させていることが分かっています。

また、いらない情報を除外する能力やパターンを認識する能力、長期記憶も低下させ未来の仕事の効率も低下させます。

fMRIを使った実験によるとタスクが変わるたびに脳の活性化部分を切り替えるか、タスクごとに一部の脳の領域を割り当てることが分かっています。しかし、使う領域を切り替えるたびに脳の消費が積み重なっていきます。これにより仕事の効率が損なわれています。

また、集中力を維持するためには50〜90分の仕事と7〜20分の休憩のサイクルが最適と言う研究もあります。あまりに長い時間集中していると燃え尽きてしまい、次の仕事に集中できなくなるみたいです。

マインドセット

キャロル・ドゥエックの研究によるとマインドセットにより、その人の成長が決まるとしています。生まれ持った能力は変わらないと言う価値観を固定型のマインドセットと言うのに対して能力は努力次第で伸ばせると言う価値観を成長型マインドセットと言います。

予想通り、固定型のマインドセットの人は困難なことに直面するとすぐに諦めてしまいます。一方で成長型のマインドセットは困難なことにも果敢に挑戦し、失敗したとしてもそこから教訓を学んでチャレンジし続けます。

マインドセットはストレスに対しても異なる反応をします。人はストレスに晒されるとコルチゾールとデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)が分泌されます。コルチゾールは血圧や血糖を高め、免疫力の低下を引き起こすのに対し、DHEAは鬱や心疾患、パーキンソン病、肥満などを軽減することが知られています。マクゴニガルの研究によると成長型のマインドセットの人がストレスに晒された時にはコルチゾールよりもDHEAの方が高くなり健康被害よりも健康にメリットがあるとしている。

一流と言われるアスリートにも成長型のマインドセットの人が多く、ストレスを取り除かなければならないものとして認識するのではなく、能力を発揮するために助けになるものと認識しています。

無駄なものをなくす

ロイ・バイマスターのクッキーとラディッシュの実験からも分かるように心も使った分だけ疲労します。そのため、無駄な仕事や選択を減らすことによって大事な時に最大の集中力で取り組めます。

フェイスブックのCEOであるマーク・ザッカーバーグはいつも同じ服装をしています。これにより、服を選ぶのに使う脳の働きを大事な仕事に使おうとしています。

他にも仕事を型にはめることで無駄に脳を浪費させずに済みますし、生活のリズムを作ることで集中力を高めることができます。自分が朝型の人間なのか夜型の人間なのか見極めることで大事な時間に高い集中力を発揮することができます。

休息をとる

効果的に休息をとるためにも3つのポイントがあります。

  • 散歩
  • マインドフルネス
  • 睡眠

散歩

スタンフォード大学の研究者たちが短い散歩休憩が想像力を高めると言う結果を出しています。

被験者を2つのグループに分け、片方のグループには屋外で歩き回ってもらい、片方のグループには机に留まってもらい変わった日用品の使い方について案を出してもらいました。

その結果、歩き回ったグループの方がもう片方のグループよりも40%面白いアイディアを思いつきました。このことから、散歩により脳の一部が散歩に使われるため脳の無意識を司る部分にアクセスし易くなったことが考えられています。

また、1時間ごとに2分の散歩をすることで座りっぱなしによる早死にのリスクを33%減少させると言う研究もあります。

マインドフルネス

マインドフルネスにより前頭前野を活性化し、ストレスに対してどのように反応すべきか冷静に判断できるようになります。マインドフルネスの1つの方法として瞑想が知られています。

マインドフルネスによりストレスに耐性が付いていると辛い時にも頑張れるようになります。マラソン選手が試合中に苦しい、辛いと思っていると心拍数が上がり、筋肉が強張ります。しかし、マインドフルネスで心を無にして臨めると苦しい、辛いと言う感情を切り離して自分のパフォーマンスを発揮できるとされています。

睡眠

チェリー・マーの研究によるとバスケットボールの1軍の選手が最低でも10時間の睡眠をとるようにするとパフォーマンスが向上したと言う結果が出ています。

1ヶ月かけて徐々に改善が見られ、短距離走の速度が4%アップし、フリースローとスリーポイントシュートの制度が9%アップしました。

この結果は水泳選手でも再現されており、睡眠がパフォーマンスと結びついていることが明らかになっています。

他にもハーバード大学のロバート・スティックによると睡眠不足により記憶力が悪くなることが分かっています。また、クレムゾン大学の研究では睡眠不足の人は衝動的な行動をし易く、注意力が散漫になることも分かっています。

NASAでは25分の仮眠で判断力が35%、警戒心が16%アップしたと言う結果から午後の仮眠を推奨しています。

まとめ

成長するために必要なのは「負荷+休息=成長」の方程式です。私の経験では休息をおろそかにしている人が多いように思います。

チェリー・マーの研究では10時間の睡眠でパフォーマンスが上がると言うデータが出ていました。読者の中で10時間も睡眠を取っている人はどれだけいるでしょうか?それほど睡眠が重要なのです。

頑張れば頑張った分だけ報われると思っている人が多いようですが、それは間違いです。我武者羅に頑張ればいいと言うものではなく、賢く努力しなければなりません。努力の成果を100%引き出すためにもしっかりと休息しましょう。

こうした成長するための技術はキャリアアップ に活かすと人生がより良くなると思います。

参考文献

PEAK PERFORMANCE 最強の成長術

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