外国語を使うと理性的に判断できる話

外国語を使うと理性的に判断できる話

思い込みで判断しないためにはどうすれば良いのでしょうか?
➡︎外国語を聞くと思考に負荷がかかり理性的に考えられるようです。

人にはバイアスがあり正しい判断ができないとされています。ノーベル賞を取ったダニエルカーネマンは多くの判断が直感に頼っていることを突き止めました。今回は2019年にConstantinos Hadjichristidisによって発表された論文に基づいて外国語を使うことで理性的に判断できるという話を紹介します。

外国語を使うと理性的に判断できる話

外国語を使うことで直感が作用しにくくなる

例えば外国語を使うことで
・汚い言葉を使いにくくなったり、
・多くの人たちを助けるために誰かを犠牲にしようとしたり、
・失礼な振る舞いにも寛容になったり、
なるなどの効果が確認されています。
➡︎普段使わない言葉を使うことで脳に負荷がかかり直感的な言動が少なくなるようです。

外国語で直感が働きにくくなる理由

➡︎外国語を使うと連想される言葉が引き出されにくくなるため直感で動かなくなるようです。

実際に自国語で道徳心や社会的規範を学ぶと、自国語を使う時はその道徳心や社会的規範に則るようになるようです。
つまり、自国語を使うと連想される記憶が引き出されやすい為、直感的で動いてしまうという事です。

調査方法

➡︎著者は迷信を使って直感と言語の関係を調査しています
迷信は根拠がないため理性的なほど信じ難いと考えられます。

そのため、著者は外国語を使うことで直感的なバイアスを抑え、迷信を信じにくくなると考えました。

ちなみに迷信を信じることで
・不安や悲しみが減り、
・ゴルフのパッティングがうまくいくようになる
などが知られていますが、イギリスでは13日の金曜には事故が多くなるということも知られています。

外国語を使うと迷信が影響しにくくなる

181人の学生を対象にネガティブな迷信を読ませ、その後の行動がうまくいきそうか9段階で判断してもらいました。
迷信はイタリア語とドイツ語(自国語)、英語で書かれていて普段使わない言葉で読むと信じにくくなると考えられます。

✔️2種類の迷信を使って調査しています
・あなたは手術を控えています。手術の日に手洗い場の鏡が割れました。手術についてどう思いますか?
・難しいと思っている運転の試験があります。その直前に黒猫が通り過ぎました。運転の試験についてどう思いますか?

この実験をうまく機能させるために、外国語の習熟度や間違った訳をしていないかも確認しています。


この結果、外国語で迷信を読んだグループネガティブな予想をしにくくなっていました。
また、2つの迷信での差がないことと、女性の方が迷信を信じやすかったという結果が得られました。

?この実験の課題
・外国語を読んだだけで効果がある可能性を排除できない。
・ポジティブな迷信でも効果があるのか分からない。

こうした課題に対処するため、迷信はネガティブなものとして上記の物を使用し、それに加えポジティブなものとどちらでもないものを用意して調査しました。

435人を対象に英語とドイツ語(自国語)で迷信を読んでもらいその後の行動がうまくいくか9段階で判断してもらいました。

?ポジティブな迷信
・昇進のかかったプレゼンがあります。公園で練習している時に四葉のクローバーを見つけました。プレゼンについてどう思いますか?
・片思いの人がいる夜のパーティーに向かっています。パーティーについたときに流れ星を見つけました。好きは人と会うことについてどう思いますか?

?どちらでもないもの
・履歴書を提出しようとしています。キッチンの流しが詰まっていることに気づきました。履歴書を出すことについてどう思いますか?
・試験を受けようとしています。会場に入る前に建物の前で白い犬を連れている人を見ました。試験についてどう思いますか?

✔️不思議な現象を信じにくくなったか検討するため、下記の質問にも5段階で答えてもらいました
・Fingers crossed(幸運を)と言ったり、実際に指をクロスさせますか?
・幸運のお守りを身に着けますか?
・幸運のために木をたたいたりしますか?
・不吉なことが起こらないように鏡が割れないよう心配しますか?
・13という数字の迷信を信じますか?
・不幸が起こると考え梯子の下を歩かないようにしますか?


この結果、外国語で迷信を読んだ人はポジティブな影響もネガティブな影響も受けにくくなっている事がわかりました。
また、ポジティブでもネガティブでもないものに対しての差は言語間で無く、不思議な現象を信じやすくなっているということも確認されませんでした。

✔️この結果から、外国語により理性的に考えられるようになることが分かりました。
また、ポジティブな迷信の方が効果が大きいことも分かりました。

なぜ、理性的になれたのか?

外国語を使うと思考能力が低下する

外国語の方が思考に負荷をかけるため、直感が働きにくくなり迷信を信じにくくしたと考えられます。
外国語の習熟度が低いほど思考に負荷がかかりやすくなり迷信を信じにくくなるようです。

直感に作用する記憶プロセス

直感は連想記憶にリンクしており学習を通じて強められたり弱められたりします。何かアイディアを思いついたときに連想記憶が働き、アクセスしやすさによってそのアイディアが良いか悪いか判断されます。
2000年にMarian と Neisser によって行われた研究によると、ロシア語でインタビューされた被験者はロシア語での記憶がよみがえり、英語でインタビューされた時は英語での記憶がよみがえりやすかったようです。

✔️直感的なことにはメリットもある
今回の研究では外国語を使うとで理性的になるメリットが示されました。
しかし、直感的であることでポジティブが高まることも分かりました。こうしたメリット、デメリットをうまく利用していきましょう。

関連記事