感情をコントロールする心理学的方法。感情的知性を鍛えよう

感情をコントロールする心理学的方法。感情的知性を鍛えよう
この記事はこんな悩みを解決します
  • 感情をコントロールするための方法が知りたい
  • 感情的知性について知りたい
  • 感情に流されず理性的に判断できるようになりたい

一時の感情に流されてお菓子を食べ過ぎてしまった、イラっとして相手が傷つくことを言ってしまった、なんて経験がある人も多いのではないでしょうか?

この記事を読むことで心理学的に感情をコントロールする方法がわかります。

感情をコントロールする心理学的方法。感情的知性を鍛えよう

まずは感情をコントロールすることのメリットや感情をコントロールするとはどういうことなのか紹介します。

感情をコントロールするメリット

感情をコントロールする能力の事を感情的知性といい、1995年にDaniel Golemanによって世界中に広まりました。

仕事でも知能指数(IQ)と同じぐらい感情的知性(EI)も重要な要素だ、ということが分かっています。

ノースイースタン大学の研究ではチームの感情的知性が高いとクリエイティブな発想力やチームの協力的な姿勢が強まることが分かっています(R)。

どうやら頭の良さを仕事に活かすためには感情をコントロールしないといけないようです。

では、感情をコントロールするとはどういうことなのでしょうか?感情的知性について理解すると答えが分かります。

感情的知性とは

感情的知性は4つの要素で構成されています。

  1. 自己認識
  2. 自己制御
  3. 共感
  4. 社会的能力

上から難易度が軽い順に並んでいます。感情的知性が高い人ほど自分と他人の感情をコントロールできるため下の能力が高い傾向にあります(R)。

では、それぞれについて紹介していきます。

自己認識

 自分の感情がどういう状態なのか認識する能力です。

仕事で理不尽な怒られ方をして「今、イライラしてるな」という明らかなものだけではなく、気持ちの良い挨拶をもらった時やトイレがきれいになっていた時などわずかな変化も認識する能力です。

この能力があるということは客観的に自分を見れているということです。そのため、正確に自分の評価ができ自信が持てるようになります。

また、我を忘れて自分が怒っていることに気づけなくなることも無くなります

自己制御

 自分の感情をコントロールする能力です。

自分の感情を認識した後にどういう感情でいるべきか考え、行動に移します。例えば、上司と意見の食い違いが起こりイライラしてるな、と認識したときには一旦距離をとったり、別の仕事に集中して感情をニュートラルな状態に戻そうとします。

この能力があると自分のネガティブな感情を抑えることができます。同じような能力にセルフコンパッションというものがあります。自分への思いやりによりストレスや不安を軽減するという方法です。

共感

 他人の感情を理解する能力です。

自分の感情だけでなく相手の感情を読み取る能力も感情的知性に含まれます。例えば、時計を何度も確認しているから焦ってるな、急に語気を強めたから伝えたいポイントなんだろうな、と判断することを言います。

この能力があると言葉遣いや話の内容以外にも些細な仕草や表情からも相手の感情を読み取ることができます。そのため、サービスの質を高めたり、違う価値観の人への理解も深まります。

社会的能力

 他人の感情を認識し適切に扱う能力です。

他人の感情に共感し傷つけないようにすることで社会との良い関係を構築できます。例えば、この話題については敏感だから触れないようにしよう、野球のことを話していると楽しそうだから野球の話題を振るようにしよう、などです。

この能力があればチームメンバーの感情を考慮して仕事が進めれます。そのため、チーム全体のモチベーションを高め円滑に仕事をすることができます。

感情的知性のチェックリスト

感情的知性が高いかどうかチェックリストがあるので紹介しておきます。

感情の認識
・偽りの感情の認識
・正確な感情と不正確な感情を区別する
・望んだ時に感情を表現できる
・環境やアート、音楽の感情を認識する
・他人の声や表情、言葉遣い、振る舞いから感情を認識できる
・自身の体調や思考、気分などから感情を認識する

感情を使って思考を促進させる
・進行中の感情に基づいた問題の選択肢により認識を高める
・異なる認識を生じさせる為に気分の変動を活用する
・今の感情を考慮して思考の優先順位を決める
・他人との関係づくりを感情を使って改善する
・決断や記憶の補助として感情を生じさせる

感情の理解
・感情を評価する上で文化的な違いを認識できる
・相手がどんな感情になるかを理解できる
・感情の変化を認識できる
・いろんな感情が混ざった状態を理解できる
・雰囲気と感情を区別できる
・感情を省いた状況を評価する
・感情間の関係を認識できる

感情の管理
・望んだ結果になるように効果的に他者の感情を管理する
・望んだ結果になるように自身の感情を管理する
・感情的な反応を維持したり、弱めたり、強めたりする戦略を評価する
・相手の反応を観察し相手の考え方を理解する
・必要に応じて感情を表現する

感情的知性の高める方法

上記で感情をコントロールするとはどういうことなのか分かったかと思います。
続いて、感情的知性を高める方法について紹介します。

感情的知性を高める方法
  • 自分に質問する
  • 感情的知性の高い人のマネをする
  • マインドフルネス

自分に質問する

感情的知性を高める3つの質問があります(A)。

感情的知性を高める3つの質問
  • 他人から見た自分と自分から見た自分はどれぐらい違うか?
  • なんのために感情的知性を高めるのか?
  • 何を変えれば目標を達成できるか?

他人から見た自分と自分から見た自分はどれぐらい違うか?

 最初のステップは自分を正しく認識できているか(感情の認識)、から始まります。

人は自分の主観の影響を受けバイアスがかかるだけでなく、盲目的になることが知られています。

他人に自分を評価してもらう

他人から見た自分を知るために他人から意見をもらいましょう。
しかし、他人からのネガティブな評価によって自尊心か傷つけられることもあります。
ネガティブな評価でも自分を成長させてくれるものと認識し関係の悪化につながらないようにしましょう。

自分で客観的視点に立とうとすることも有効です。
「今、自分がどう見えているか」を意識することで感情的になっていないか分かるようになります。

なんのために感情的知性を高めるのか?

 動機づけをはっきりさせることで感情的知性が高まりやすくなります。

感情的知性は自分の感覚に縛られているので改善することが難しく、特定の技能を習得するよりも長期で考えなければ改善していきません。

そのため、積極的な理由がなければ感情的知性は改善しません。上司や同僚、人事から言われたからという理由ではなく、自分の将来をどのように変えたいのか明確にしましょう。

何を変えれば目標を達成できるのか?

 どの感情的知性スキルを改善するか決めた後、具体的な行動を決めていきます。

例えば、相手の話を聞いているうちに感情的になり話を遮ってしまうことに悩んでたとします。よく話を聞くために相手が話し終わるまでは絶対に口を開かないと決めておきましょう。

具体的な行動を決めておくと効果的

イギリスのシェフィールド大学が行なった研究では目的と具体的な行動を決めておくことで目標を達成できるようになるという報告がありますR)。
意識的に行動すれば徐々に神経回路が構築されていきます。最初は慣れないかもしれませんが徐々に自然と振舞うことができるようになり、感情的に動いてしまうことが無くなります。

感情的知性の高い人のマネをする

何かを習得するときにはマネをすると効果的ということが知られています。

感情的知性の高い人の振る舞いには13の特徴が確認されています(A)。自分の感情的知性が高くないとしても、下記のような特徴を真似ることで感情的知性の高い人と同じ効果が期待できます。

1、感情について考える

感情的知性の高い人は何の感情が強いか、弱いか考えます。今の環境が自分の感情や意思決定にどのように影響してるだろうか、感情が相手の言動にどのように影響しているだろうか、などを自問自答しています。


2、一旦立ち止まる

感情的知性の高い人は何かするときや発言するときにいったん立ち止まります。感情的に動いて間違った言動をするのを抑えることができます。一旦立ち止まるのは分かってはいてもなかなか行うのが難しいとされています。


3、気持ちをコントロールする

通常は瞬時に感情が出てしまいコントロールすることが難しいとされています。しかし、感情的知性の高い人は自分の感情の変化に気づきやすく、反応をコントロールできるようになります。感情に支配されないことで目標に突き進んでいくことができます。


4、批判から利益を得る

誰しもがネガティブなフィードバックに対してよい感情になりません。しかし、批判されることは自分の成長の機会でもあります。もし成長できないと思っても他人の感情を考える機会になります。そのため、感情的知性の高い人はネガティブなフィードバックを受け取ったときにはどうしたら自分の利益になるか、と自問自答します。


5、信頼を示す

信頼とは自分のすべてをさらけ出すことではありません。自分の価値観や行動の原則を一貫して示すことを言います。すべてが受け入れられるわけではありませんが、ここで重要なのは強い意志を持って自分の考え方を示す事です。


6、共感を示す

他人の感情や考えに共感することを言います。相手を決めつけるのではなく、相手の目線から物事を見ることで相手との繋がりを強くします。


7、他人を褒める

すべての人は承認されたり感謝されたいという欲求があります。誰かを褒めるときにはこうした欲求を満足させ信頼を構築できます。感情的知性が高い人は相手の良いところに注目して感謝の気持ちを共有できます。


8、役立つフィードバックを与える

ネガティブなフィードバックは相手の感情を傷つけます。しかし、感情的知性の高い人はそれに気づいて建設的なフィードバックを返します。これにより、フィードバックを受け取った人の気持ちは前向きに保たれます。


9、自分から謝る

自分から謝ることは謙虚さを示し人を引き付ける魅力になります。感情的知性の高い人は謝ることが自分のエゴを示すよりも良い関係の構築に役立つと知っています。


10、許して忘れる

恨むことは傷口を抉るようなものです。感情的知性の高い人は許して忘れることでネガティブな感情を引きずりません。また、許すことで相手の敵対心を避けることができます。


11、コミットメントする

子供との約束や仕事での締め切りに遅れるなどしません。有言実行することで信頼されるようになます。


12、他人を助けます

人助けをすることは相手にポジティブな感情を与える一番効果的な方法です。誰かのために時間を費やすことで信頼を得ることができます。


13、自分を怠慢から守ります

自分のために他人の感情を操ろうとするのが感情的知性の悪い面です。そうならないようにするためにも感情的知性を高めないといけません。

マインドフルネス

マインドフルネスとは「今、この瞬間」に集中することを言います。

現代人は「今」に集中できていない

近年では情報が多くなったことにより「今」よりも「過去」や「未来」に心を奪われていることが多くなっています。
この状態だと脳の理性を司る領域が発達せず、感情に流されてしまうことが指摘されています。

感情的知性の誤用

感情は目に見えないので感情的知性を誤解して捉えてしまう人もいます。
よくある感情的知性の誤用について3つ紹介しておきます(A)。

感情的知性の誤用
  • 同情のふりをする
  • 話を聞くふりをする
  • 着飾った承認を求める

同情のふりをする

同情は感情的知性の重要な要素の一つですが、健全な範囲を越えた時には相手を弱くしてしまうことがあります。

人は困難なことに直面することで成長できます。しかし、相手がストレスを抱えているからといってすぐに手助けしてしまっては成長の機会を奪うことになります。

長期的に見て相手のメリットになることをするよう心がけましょう。
人にはストレスをポジティブに捉えることで成長できるという能力があるようです。

話を聞く人のふりをする

他人の意見に耳を傾ける事も感情的知性の重要な要素の一つです。

しかし、自分と相手の意見が違うということに気づかなければ知らず知らずのうちに他人を自分の意見に従わせようとしてしまいます。

例えば、話し合いの中でお互いに妥協点を探りあっていたつもりが、お互いが自分の利益を追求して話し合いが進まないということがあります。
話を聞く目的が相手を理解するためではなく、自分の利益のためなので話が前に進みません。

強いビジョンを持とう

気をつけなければならないのが、強いビジョンや考えがあったとしてもそれは他の人の意見を軽視している(感情的知性が低い)わけではないということです。相手の感情に合わせて行動するのも大切ですが、自分の立場を明確にすることは相手に自分の事を理解してもらい目標までの余計な仕事を減らすことになります。

着飾った承認を求める

他人からのフィードバックを受け取る事も感情的知性の重要な要素の一つです。

しかし、組織の体制上の理由など消極的な理由から承認を求めている場合、相手に不快な思いをさせるだけになります。

例えば、自尊心の高い上司が部下からのフィードバックを受け取ろうとする時などです。自尊心の高い人はネガティブな評価に敏感に反応します。そのため、上司の自尊心を傷つけないよう部下は本音のフィードバックが行えません。これでは何の意味もありませんよね。

感情的知性は感情的ニーズによって損なわれる

上司は何かにつけ不安ですが真の上司はその不安に向き合い、誰かにその負担を背負わす事はしません。感情的知性の力をうまく使いたい場合は表面の下に潜む感情に目を向け、対処されていない傷や隙間に注意する必要があります。

まとめ

今回は感情をコントロールするために感傷的知性を鍛えようという話を紹介しました。

感情のコントロールが上手いということは自分の感情だけでなく相手の感情もくみ取れるということのようです。

自分の感情には気づけるけど相手の感情を考えずに仕事をしてしまっているという人が多いのではないでしょうか?

管理職は特に感情的知性が重要とされています。感情に流されず、部下の感情をマネジメントすることで成果の出るチームが作れます。

感情的知性を鍛えて嫌な思いをする人を少なくしましょう。

参考文献
Emotional Intelligence Has 12 Elements. Which Do You Need to Work On?

関連記事