幹細胞コスメは美白にも効果がある

幹細胞コスメは美白にも効果がある

以前、幹細胞コスメが効く理由について書きました。細胞から放出されたサイトカインにより細胞を活性化させ肌の根本から修復することができるというものでした。今回は肌のシミについても上清が有効という研究結果について書いていきます。

幹細胞コスメは美白にも効果がある

慶熙大学のEun Sung Kimが2015年に出した論文によるとMSC(間葉系幹細胞)の培養上清がメラニンを抑制に効果があるようです。

筆者らはMSCの上清が様々な治療に利用できると考えられていることから、メラニンの合成阻害にも上清に含まれるサイトカインが効果があるのではないかと思い研究を開始しています。

メラニンは肌が日焼けなどで黒くなったり、シミになったりする原因として知られています。紫外線に当たることにより肌を守ろうとして作られるのですが、美容の面から見た時には嫌われています。メラニンが癌の原因になることもあるそうで、メラニンの合成が上清を使うことで抑えられるという結果を出しています。

Mat Tekという会社の出しているMelanoDermという製品を使って上清の効果を検証しています。通常は皮膚の線維芽細胞と呼ばれる細胞を使うのですが、それだと実際の皮膚と違うよね、ということで人の皮膚のような環境を生体外で作り出すための製品です。世界中の化粧品会社で使われているようでいくつかの論文にも出てきます。

この製品に特殊な試薬を振りかけることで皮膚のメラニンの合成を促します。その時にMSCの上清を使うとメラニンの合成が半分程度に抑制されるという結果が得られています。

さらに、筆者らはメラニン合成のカギとなるMITF(microphthalmia-associated transcription factor)と呼ばれる因子が上清を加えることで抑制されることを突き止めています。

なぜかわからないけど上清を加えるとメラニンが抑制されるというのではなく、細胞内でどのように作用しているのか明らかにすることで科学的な根拠が高まります。

さらに、今までの研究によりUVによる刺激を細胞がどのように認識してメラニンを蓄積するのかある程度わかっていますので、そのデータと相関が得られるのか見ています。

ここから先は難しい話になりますので興味のある人だけ見てください。

MITFはメラニンの合成を促進するチロシナーゼやTRP1/2(tyrosinase related protein1/2)の発現を高めることが知られています。さらに、チロシナーゼはDOPA(3,4-dihydroxyphenylalanine)をヒドロキシ化しdopaquinoneにすることでメラニンの合成を促進し、TRP1/2はその経路を強める働きがあります。

筆者らは上清を加えることでチロシナーゼの合成が阻害されているのではないかと仮定しチロシナーゼの量を測定しました。すると、上清を加えることによりチロシナーゼの量が少なくなっていることが分かりました。

また、ERKがMITFの分解を促進することが知られていましたのでERKの活性化とMITFの量を調べてみるました。その結果、上清によりERKが活性化しMITFの量が低くなっていることが分かりました。

これらの結果から上清が次のようなメカニズムで作用していると考えられます。

このようにただ上清がメラニンを作りにくくする、というだけではなく今までの知見ととの関連やメカニズムも明らかにして示していることから信頼できるデータとなっていると思います。

参考文献

Conditioned Media from Human Umbilical Cord Blood-Derived Mesenchymal Stem Cells Inhibits Melanogenesis by Promoting Proteasomal Degradation of MITF

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